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“オリックス農業法人”、グループあげて6次産業化進める

今年中に野菜販売先を約100社へ
“オリックス農業法人”、グループあげて6次産業化進める

オリックス八ヶ岳農園の葉物野菜

 オリックスは、グループの農業法人などが作った野菜の販売先を、年内に現在の1・7倍の約100社に増やす。葉物野菜を水耕栽培する農業法人「オリックス八ヶ岳農園」(長野県富士見町)の販売先として、首都圏の小売業や飲食業などへ約60社に供給しているが、施設の生産増強に加えて、静岡県の農業法人でも早ければ2017年3月までに、生産量の多いトマトやパプリカなどの出荷が始まることから、販売先を中部・関西圏などでも増やす。

 オリックスは今年3月に「事業法人営業第二部」を「農事業部」に改称。事業としての農業を明確にした。農作物の生産を当面の目標にしながら、将来は加工や流通販売を事業領域の主軸に据え、グループで6次産業化の構築を進める方針。

 国内の生産拠点は、カゴメ向けのトマトを生産する加太菜園(和歌山市)を04年に共同出資して設立して以降、全国に5カ所ある。このうち本多園芸(長野県原村)との共同出資で15年4月に設立したオリックス八ヶ岳農園は、新たに建設中の水耕栽培施設が9月にも出荷を始める。葉物の生産能力は既存の約1・5倍の年300トンになる。

 富士通などと共同出資した農業法人「スマートアグリカルチャー磐田」(静岡県磐田市)は、年明けまでにトマトやパプリカなどのハウスが相次いで完成する。水耕栽培や土耕栽培を含む総事業面積は8万5000平方メートル。年間供給能力は1200トンを見込み、3年後に売上高約10億円を目指す。

 オリックスは供給量の拡大が見込まれることから、既存の営業ネットワークも活用して販売先を拡充する。併せて近い将来、生産拠点を数カ所増やすことも視野に入れている。
日刊工業新聞2016年7月8日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
 国内農業の構造課題を解決する方法の一つが企業の農地所有。耕作放棄地の解消につながるほか、IT活用による効率化や生産・加工・流通の一貫体制で競争力を強化できる。国家戦略特別区域の兵庫県養父市では秋以降、全国で初めて企業の農地所有が特例措置で認められる。養父市は現在280万平方メートルある耕作放棄地に歯止めをかけるため今回の特例で企業の農地所有を促す方針。14年5月の特区認定から2年が経過、オリックスやヤンマーなど市内外の11事業者が養父市で農業に参入した。ただ企業が農地を所有すると経営の失敗で撤退した場合、農地が荒れてしまうとの懸念も根強い。養父市では「地元農家で当初は企業参入に心配の声があったが、今は特区施策を好意的に受け取っている」(地方創生課)という。4月からの農地法改正で農業者の出資比率は2分の1以上に緩和された。制約は依然として残るものの、少しずつ企業に門戸は開かれつつある。

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