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熊本産スギ・ヒノキでつくる吸音板!子ども用施設で普及目指す

日進防火板工業(福岡県筑後市)が産学官で開発
熊本産スギ・ヒノキでつくる吸音板!子ども用施設で普及目指す

国産吸音板を施工した熊本県内の保育園

 建材メーカーの日進防火板工業(福岡県筑後市、浜治正嗣社長、0942・53・6145)が、音響調整板(吸音板)の普及に力を入れている。合板の一面に穴を開けた製品で、国産木材を使っているのが特徴。公共建築物への木材利用を拡大しようとする国の方針が追い風だ。浜地社長は産学官による高付加価値化で需要を開拓しようとしている。

 ―なぜ国産材の吸音板なのですか。
 「公共建築への木材利用を促す法律が2010年に施行され、国産材が使われる機会が増えた。吸音板は従来あるが、多くは外国産材で作られている。そこで国産材の製品を開発しようと、熊本県産業技術センター、熊本大学、合板メーカーなどで産学官体制をつくった。地元の木材を使うということで熊本県や木材団体も協力している」

 ―開発の取り組みは。
 「材料の針葉樹合板は従来、建築物の構造用として使われている。だが表に出ることは少ない。へこんだ節や、割れ、しみ、やになどがあるからだ。最初に作ってもらった合板の試作品も課題が多かった。合板メーカーが努力して、節が少ない板を選んで使い、加工の跡が残らないよう樹皮を剥ぐ方法を工夫するなどした。当社は研磨装置を導入し、合板メーカーの作業だけが増えないようにしている。誰かに負担が集中するような取り組みは長続きしないし、事業を拡大することもできないだろう」

 「合板にするすべての板を同じ素材にするか別にするかも試作を重ねて検討した。その結果が内側を杉、外側をヒノキとする構造。杉の外側も試作したが、けば立ちが問題視されると断念した」

 ―幼稚園や保育園への普及を目指しています。
 「吸音性能は穴の大きさや間隔などで違う。子どもの声を考慮し、高い音の吸音率が高くなるような穴の大きさと間隔にした。どのような吸音が良いか熊本大の測定施設で調べてもらい、設計に反映した。吸音率を上げるために穴を大きくする方法がある。しかし子どもの指が入る大きさだと、けがをする可能性があるため壁には使えない。保育園の施工では天井の板だけ穴を比較的大きくして対応した」

 ―今後の展開は。
 「単に吸音板を売るのではなく、ユーザーが困っていることに対して応える空間を作っていく。音環境が子どもに与える影響について注目しており、大学と一緒にデータを蓄積して研究していきたい」
 
【チェックポイント/林業で地方創生】
 日本の林業は、環境保護や国土保全など多くの役割を果たしている。地方創生ともかかわる地域産業であり、その振興の必要性は論をまたない。そのために法律などの仕組みによる普及の後押しがある。しかし、後押しの力なしで需要を創出してこそ、真の普及につながる。そのためには製品の付加価値を生み出す必要がある。音環境が子どもに与える影響の研究は、付加価値となる可能性を持つ。その価値を分かりやすく伝え、理解を得る取り組みも重要となるだろう。
日刊工業新聞2015年05月05日 モノづくり面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
「国産」「木材」「子ども」と、アピール力がありそうなキーワードが並んでいます。ソリューションビジネスにできるかどうかが重要ですね。民間の託児施設が差別化要因の一つとして導入する例もありそう。

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