矢木沢ダム貯水量20%台、関東の水不足深刻化
水が使えなくなる?飲料水優先、生産水の確保は大丈夫か
関東地方の水不足が深刻化してきている。6月としては29年ぶりの利根川水系での10%取水制限が始まっており、このまま空梅雨が続けば、取水制限の20―30%への引き上げも考えられる。プール営業など日常生活だけでなく、産業活動にも影響が及びそうだ。
利根川水系は現在、8ダム体制(1992年以降)が整っている。多摩川、荒川、利根川に加え、三つの水系それぞれが水路や連絡管で結ばれ、首都圏の渇水防止に備えている。しかし、利根川水系最大級の矢木沢ダム(写真、群馬県みなかみ町)は貯水量が20%台に落ち込み、赤茶色の湖底が目に飛び込んでくる。
水道の蛇口を一絞り―。大渇水にならないことを祈りたい。
国際非政府組織(NGO)のCDP(旧カーボンディスクロージャープロジェクト、本部ロンドン)は22日、世界の大企業405社の水資源保全への取り組み調査をまとめ発表した。日本からはトヨタ自動車、アサヒグループホールディングス(HD)、ロームの3社を最優秀の「Aリスト」に選出した。全体では米フォードモーターを含む8社を選んだ。
CDPは機関投資家に代わって企業の環境意識を調査し、採点結果を公表している。気候変動問題への取り組みの評価では世界標準となっている。水不足や汚染による水問題への関心の高まりを受け、2010年から水資源の関わる調査「CDPウォーター」を開始。今回、初めて評価結果を発表した。
日本企業だけを対象とした水の調査も実施している。150社に質問を送り、ほぼ半数の73社から回答があった。操業に影響を及ぼすような「水リスク」にさらされている企業が62%に上った。
投資家が企業の水使用に注目している。機関投資家の立場で企業に環境情報開示を求める英国の非営利団体CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は、2014年に続き15年も日本企業に水使用にかかわる質問状を送った。世界の大企業500社には10年から送付しており、15年は採点結果を一部開示する。
かつて企業の水問題といえば工場排水による水質汚染だった。しかし新たな経営課題が浮上している。生産に使う水が十分に確保できないと操業に支障が出る。水道料金の上昇もコストを圧迫する。企業は日常から、こうした経営に影響する「水リスク」を意識しているだろうか。
大半のメーカーは、水資源の豊富な土地を選んで工場を建設している。海外進出時も現地の水環境を確認しているはずだ。しかし新興国では人口増加や生活の都市化で水需要が増え続けており、将来の水不足が心配される地域が出てきた。
国連によると現在、十分な水が手に入らず生活に不便を感じる「水ストレス」に直面する人口は世界で7億人。今後の人口増加と経済発展で25年には世界人口の3分の1が水ストレスにさらされると予想される。飲料水が優先されるため、生産用水の確保が課題となる地域が増える。
企業側も水リスクを意識し始めている。14年のCDPの調査では、質問状が届いた日本企業150社中、回答したのは65社。そのうち47%が水リスクを認識していた。潜在的な影響としては操業コストの上昇、成長に対する制約、サプライチェーンの混乱、事業所の閉鎖との回答があったという。
CDPの調査は500社以上の金融機関が投資判断の材料にしている。15年の調査には、さらに多くの日本企業が回答したと思われる。
1日から7日までは「水の週間」。CDPから質問状が届かなかった企業も、ウェブサイトに公開している質問状を参考に工場立地する地域の水資源を改めて調査してみてはどうか。リスクに最も有効なのは、早めの対策だ。
利根川水系は現在、8ダム体制(1992年以降)が整っている。多摩川、荒川、利根川に加え、三つの水系それぞれが水路や連絡管で結ばれ、首都圏の渇水防止に備えている。しかし、利根川水系最大級の矢木沢ダム(写真、群馬県みなかみ町)は貯水量が20%台に落ち込み、赤茶色の湖底が目に飛び込んでくる。
水道の蛇口を一絞り―。大渇水にならないことを祈りたい。
「水資源保全」に優れた会社、日本からトヨタなど3社
日刊工業新聞2015年10月23日
国際非政府組織(NGO)のCDP(旧カーボンディスクロージャープロジェクト、本部ロンドン)は22日、世界の大企業405社の水資源保全への取り組み調査をまとめ発表した。日本からはトヨタ自動車、アサヒグループホールディングス(HD)、ロームの3社を最優秀の「Aリスト」に選出した。全体では米フォードモーターを含む8社を選んだ。
CDPは機関投資家に代わって企業の環境意識を調査し、採点結果を公表している。気候変動問題への取り組みの評価では世界標準となっている。水不足や汚染による水問題への関心の高まりを受け、2010年から水資源の関わる調査「CDPウォーター」を開始。今回、初めて評価結果を発表した。
日本企業だけを対象とした水の調査も実施している。150社に質問を送り、ほぼ半数の73社から回答があった。操業に影響を及ぼすような「水リスク」にさらされている企業が62%に上った。
「水ストレス」に直面する人口は世界で7億人
日刊工業新聞2015年08月04日
投資家が企業の水使用に注目している。機関投資家の立場で企業に環境情報開示を求める英国の非営利団体CDP(旧カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)は、2014年に続き15年も日本企業に水使用にかかわる質問状を送った。世界の大企業500社には10年から送付しており、15年は採点結果を一部開示する。
かつて企業の水問題といえば工場排水による水質汚染だった。しかし新たな経営課題が浮上している。生産に使う水が十分に確保できないと操業に支障が出る。水道料金の上昇もコストを圧迫する。企業は日常から、こうした経営に影響する「水リスク」を意識しているだろうか。
大半のメーカーは、水資源の豊富な土地を選んで工場を建設している。海外進出時も現地の水環境を確認しているはずだ。しかし新興国では人口増加や生活の都市化で水需要が増え続けており、将来の水不足が心配される地域が出てきた。
国連によると現在、十分な水が手に入らず生活に不便を感じる「水ストレス」に直面する人口は世界で7億人。今後の人口増加と経済発展で25年には世界人口の3分の1が水ストレスにさらされると予想される。飲料水が優先されるため、生産用水の確保が課題となる地域が増える。
企業側も水リスクを意識し始めている。14年のCDPの調査では、質問状が届いた日本企業150社中、回答したのは65社。そのうち47%が水リスクを認識していた。潜在的な影響としては操業コストの上昇、成長に対する制約、サプライチェーンの混乱、事業所の閉鎖との回答があったという。
CDPの調査は500社以上の金融機関が投資判断の材料にしている。15年の調査には、さらに多くの日本企業が回答したと思われる。
1日から7日までは「水の週間」。CDPから質問状が届かなかった企業も、ウェブサイトに公開している質問状を参考に工場立地する地域の水資源を改めて調査してみてはどうか。リスクに最も有効なのは、早めの対策だ。
日刊工業新聞2016年7月8日