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携帯料金の引き下げ「対象やジャンルを絞って実施する」(ドコモ社長)

ゼロ円スマホ復活、中古市場に人気。消費者動向の後追いにならないか
 NTTドコモの吉沢和弘社長は日刊工業新聞の取材に応じ、携帯料金の引き下げに向け新たな施策を講じる方針を明らかにした。アンドロイドOS(基本ソフト)を搭載した高速通信サービス「LTE」対応のフィーチャーフォン「ガラホ」の端末導入と、安価な音声定額プランや低容量データプランとの組み合わせなどを検討する。年内にも具体策を示し、ユーザーの家計費負担の軽減につなげたい考えだ。

 吉沢社長は携帯料金の引き下げについて「すべてのタリフ(サービス料金)の値下げは大変なこと。対象やジャンルを絞って実施する」と指摘。「スマホに移行していないフィーチャーフォンのユーザーが多い。フィーチャーフォンをどうするかが課題だ」とした。

 フィーチャーフォンの人気は根強く、ドコモは音声通話やメールなど機能を絞ったガラホへ移行している。2015年に第3世代移動通信システム(3G)のガラホの販売を開始し、価格はスマホの半額程度となる。

 しかし、20年に向け第5世代移動通信システム(5G)の導入が進み、旧式の3G活用は縮小傾向。吉沢社長は「3GからLTEに移行しなければならない」と強調し、その選択肢の一つがLTE対応のガラホとなる。さらに「スマホのパケットのみならず音声通話定額プラン『カケホーダイライトプラン』もあり、フィーチャーフォンとの組み合わせも検討事項」と指摘。ガラホと月1700円の音声定額プランや低容量プランをあわせた提供が見込まれる。

吉沢社長に聞く「AIが人に寄り添いアシストする」



 ―2016年度に、17年度の営業利益目標8200億円超を達成する見通しです。次の目指す姿は。
 「まずは16年度に、17年度目標を1年前倒しで達成することが先決。次の計画は、20年の東京五輪・パラリンピックや5Gへの道筋をどう捉えるかなど(の案件があり)まだ決まっていない」

 ―AI技術の開発を強化しています。
 「目指すのは、人に寄り添いアシストする“パーソナルエージェント”。スマートフォンを持ってどこかに行った際、ユーザーの好みを分析し最適なサービスを提供する機能だ。対話や画像認識など用途ごとにプラットフォームを提供し、収益を上げていく」

 ―AI関連の研究開発投資額の配分は。
 「投資額の比率は、コアネットワークが6割、サービスが3割、端末が1割。AIやIoT(モノのインターネット)などサービスに直結する開発は広がりがあり、投資額の割合も高まるだろう」

 ―電力小売り自由化に伴うサービスの提供も検討しています。
 「自由化が進んでいるが、契約を見直すユーザーは少ない。電力会社と料金の差が出なければ(電気の販売は)難しく、スマホに電力をパックして提供していくのはイメージしにくい。節電など暮らしのサービス『dリビング』のメニューの一つに組み込むことは考えられる」
(聞き手=清水耕一郎)
日刊工業新聞2016年7月8日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
格安スマホに需要を奪われゼロ円スマホが一部の店舗でまた出始めている。販売店の多くは代理店で、キャリアに端末価格の最終的な決定権がないのは分かる。総務省の指針によると、「在庫の円滑な販売を図る場合は行き過ぎた額とならない範囲で購入補助を行うことができる」とある。店舗では「在庫限り」とセールスする場合が多い。「行き過ぎ」の基準が曖昧で、中古市場が急速に伸び始めている。当初の目的である月額料金の引き下げが力不足なのは明らか。動きの速い消費者動向の後追いにならないように。

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