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「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(24)左大臣と右大臣

どっちが上ですか?国内線と国際線の部門を超えた予約・販売システムを作る
「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(24)左大臣と右大臣

航空券の販売収益を最大化するレベニューマネジメントシステムを統合

 日本航空(JAL)国際路線事業本部国際路線事業部プロジェクト推進グループ長の宮島雅典には肩書がもう一つある。国内路線事業部プロジェクト推進グループのグループ長だ。宮島は航空券の予約・販売で収益を最大化する「レベニューマネジメント」の責任者。JALは2014年10月にレベニューマネジメントの新システムを導入し、これを機に国際線と国内線の同システムを統合した。

 JALが導入したレベニューマネジメントの新システムは、米国のPROSが提供する「O&D」。従来のレベニューマネジメントシステムは、2区間以上を乗り継いでも、それぞれを単独の予約とみなして需要予測をしていた。近年は羽田の国際化や日本経由でアジアと米国を往来する三国間流動の拡大で、乗り継ぎを考慮しない需要予測は実態に沿ったものとはいえなくなっていた。

 宮島は経営破たん前のJALの国際線と国内線の組織を「一つの会社に二つの会社が入っているようだった」と話す。JALの国際線と国内線の事業部門は、レベニューマネジメントシステムだけでなく、組織や業務プロセスも分かれていた。その結果、それぞれがまず自分の空席を埋めることを考えてしまい、安売りに走ることも少なくなかった。システム導入を機に部分最適に陥っている組織を変える必要があると考えた。

 宮島はレベニューマネジメントシステムの導入を推進する今のポジションに就く際、「国内と国際を兼務させて欲しい」と強く求めた。まず自らが媒介役となって、国際と国内で別々になっていた役割の分け方や名称をそろえるなど、組織や業務プロセスの融合を図った。

 宮島の席は国際路線事業部と国内路線事業部の間にある。「どちらから見ても中途半端な位置で、それはそれで辛い」と笑う。しかし「組織がかなりシンメトリックになり、情報交流が活発化してシナジーやコラボレーションが生まれるようになった」と効果を感じている。

 部分最適から全体最適へ―。レベニューマネジメントの新システム導入の裏には、組織と意識の改革が隠れている。(敬称略)
日刊工業新聞2015年04月15日 建設・エネルギー・生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
顧客視点では、分かれている意味はまったくない

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