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耐熱性300度C超の自動車エンジン内向け樹脂を独から輸入

ダイセル・エボニックが架橋型「PEEK」販売。軽量化需要盛り上がる
耐熱性300度C超の自動車エンジン内向け樹脂を独から輸入

架橋型PEEKで成形したパッキンなど

 ダイセル・エボニック(東京都新宿区、アンドレ・ノッペ社長)は、独エボニックインダストリーズの架橋型ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を輸入販売する。耐熱性を一般的なPEEKの170度Cから300度C以上に高めた。自動車のエンジンや変速機の内部に使う摺動部品で、鉄や熱硬化性ポリイミドからの代替需要を取り込む。国内の車部品会社にサンプル出荷し、3―5年後の市販モデルへの搭載を目指す。

 架橋型PEEKは、独エボニックが石油の掘削部材などのシール材に強い米グリーンツイードと開発した。一般的なPEEKの機械特性を維持し、耐熱性を示す「荷重たわみ温度」を従来の170度Cから300度C以上にした。高温下でも変形せずに高い強度を保てるため、摩擦・発熱する摺動部品に採用できるとみる。

 高い耐熱性が求められる自動車部材を金属から樹脂に置き換える場合、熱硬化性ポリイミドを用いることが多い。ただブロックや丸棒の形状で供給されるため、金属と同様の機械加工が必要となる。架橋型PEEKは射出成形により加工でき、設計の自由度も高く工程数や加工時間を減らせる。金属に比べコスト高になるものの、全体のコストは下げられる利点を訴求する。

 また日本の燃料電池車(FCV)やハイブリッド車(HV)市場や顧客の要望を見ながら、架橋型PEEKにガラス繊維や炭素繊維を添加したコンパウンド(混練)樹脂の開発も視野に入れる。
日刊工業新聞2016年7月7日
米山昌宏
米山昌宏 Yoneyama Masahiro
PEEKはスーパーエンプラの中でもトップクラスの性能を持っているが、高価格のため全世界の需要は約5-6千トンにとどまっている。欧米では、飛行機・自動車等の輸送機器用の需要が多く、アジアでは、電気・電子向けの需要が多い。全世界では年5%以上の需要の伸びが期待されている。PEEKの自動車用需要は、車体の軽量化のための金属代替、またハイブリッド車やEV車用として需要が増えていくと期待されている。

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