モノづくりの街・東大阪市、後継者不足を食い止められるか

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地域活性化には新規創業も欠かせない(藤綱合金の製造現場)
 大阪府東大阪市は市内モノづくり企業の事業承継支援に乗り出す。7月から具体策の検討に入り、2017年度から重点的に施策を展開する。東大阪市はモノづくり中小の集積で存在感を放ってきたが、後継者難などから歯抜け現象がじわじわ進む。市の取り組みはスピード感が勝負となりそうだ。

 16年3月、東大阪市の委託で東大阪商工会議所による「市内製造業の事業承継の実態に関する調査」がまとまった。モノづくり企業3068社に送付し、589社が回答。特に小規模企業に主眼を置き、従業員19人以下の企業438社(74・4%)から回答を得た。

「事業継続の意思なし」が2割


 調査によると創業からの業歴「50年以上」が197社(33・4%)と最も多く、経営者の年齢「65歳以上」が286社(48・6%)、経営者の就任年数は「20年以上」が312社(53・0%)。事業承継の予定は「後継者決定・事業を承継する」が174社(29・5%)と最も多い半面で、「事業継続の意思なし」が118社(20・0%)もあった。

 この結果を受け東大阪市では今後、「M&A(合併・買収)などを活用した事業の引き継ぎ」「次世代経営者のネットワーク」「事業承継の計画・準備」などに役立つ夜間セミナー、コンサルティング、支援機関の連携などが検討課題となる。

 また現在1200社のモノづくり企業が登録するウェブサイト「技術交流プラザ」を年度末に更新し、より利便性を高める考えだ。モノづくり支援室の鶴山崇室長は「モノづくり企業が集積し、ネットワークを組んで柔軟に対応してきたのが市の特色。一つでも欠けると具合が悪い」とさまざまな施策に頭をひねる。

廃業から“再起”


 モノづくりの街とされる東大阪市だが、新規起業例を見つけることは難しい。アンケートで事業継続の意思なしの理由に、4割超が「将来性がない」を挙げた点が象徴的だ。

 東大阪市の高井田地域で15年10月に若手・中堅の3人で銅鋳物業を始めた藤綱合金。同年3月に廃業した銅鋳物の上田合金の同僚3人が立ち上げた。老社長が急死し、借金のあった会社は廃業に追い込まれたが、客先の要望、地域の応援などで決断した。30代半ばの藤綱伸晴社長は「前の会社での5年間の経験、亡くなった社長の顔の広さがあってやれている」と前を向く。多くの人が「やめとけ」と起業を止めたが、業界事情に詳しい鋳型業の経営者が背中を押してくれたという。

 同業者の廃業がじわじわと進み、藤綱合金にはこの10カ月で新規客が5件程度あった。安すぎる受注単価は顧客と相談して見直してもらい、生産の改善も周りの助言を受けて取り組んでいる。生産量は旧上田合金の2割程度の月3トン弱。月によって収支の浮き沈みがあるが、借入金は徐々に減っている。

 「モノづくりに興味があっても、いきなりの開業は無理。まだ余裕はないが経験を積もうと当社に来てくれるのは基本的に歓迎」と藤綱社長は話す。小さな会社が大きな期待を背負って歩き続ける。
(文=東大阪支局長・佐々木信雄)

日刊工業新聞2016年7月7日 中小企業・地域経済面

COMMENT

三苫能徳
西部支社
記者

「安すぎる受注単価は顧客と相談して見直してもらい、生産の改善も周りの助言を受けて取り組んでいる」 すべてにあてはまるわけではないが、「儲からない」ということが事業継承できない壁の一つだと思う。「人がいない」という問題も重要だが、そもそもの話としてサプライチェーンの中で適切にお金が回るようにすべき。もちろん稼げる経営体質づくりも不可欠ですが。

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