あなたは第2ゴールキーパーという仕事を引き受けられますか?

文=明豊 注目のバルセロナVSバイエルンの因縁対決、もう一つの見所

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バルセロナのホームスタジアム「カンプノウ」
 世界のサッカーファンが注目する対戦が迫ってきた。今日の深夜(日本時間7日3時45分)、欧州最高峰の戦いである欧州チャンピオンズリーグ(CL)の準決勝で、FCバルセロナ(スペイン)とバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)が激突する。

 この試合、なぜそこまで注目されるかといえば、今、世界で最も攻撃的なサッカーをする2チームの対決だけでなく、バイエルンの監督が、かつてバルセロナの選手、そして指揮官として栄光を極めたペップ・グアルディオラが、バルサの本拠地であるカンプノウに凱旋するからだ。

 バイエルンは、2年前にグアルディオラが監督になって以降、バルサ流のパスサッカーを植え付け、今シーズンもドイツリーグで早々とぶっちぎりで優勝を決めた。一方のバルセロナも、メッシに加え、ネイマール、スアレスの南米トリオの攻撃陣が爆発、現在、スペインリーグの首位を走る。因縁に加え、とにかくスペクタルな試合が期待できるだろう。

 攻撃ばかりに目が行きがちだが、今回はあえてゴールキーパー(GK)に注目したい。バイエルンの守護神は今や世界一のGKと評されるノイアー(29)。一方のバルセロナは今年からチームに加わったテア・シュテーゲン。実は両チームとも監督がスペイン人、GKがドイツ人というこれまた奇妙な因縁である。

 テア・シュテーゲンはまだ23歳でノイアーに続くドイツ代表のGK候補を言われている。バルセロナは今シーズン、GK陣を総入れ替えし、新たな選手を獲得した。テア・シュテーゲンは当初、レギュラーかと思われていたが、リーグ戦はベテランのクラウディオ・ブラーボ(32、チリ代表)が起用されている。テア・シュテーゲンはCL用の‘準レギュラー’としての扱いだ。

 今回、GKの因縁という意味ではもう一人、忘れてはいけない人物がいる。バイエルンの「第2ゴールキーパー」のレイナ(32)だ。彼はバルセロナのカンテラーノ(下部組織)出身で、トップチームで活躍できず海外に活路を求め、リバプール(イングランド)やナポリ(イタリア)で成長したトップクラスの選手である。ところが今シーズンから、ノイアーの第2ゴールキーパーになることを覚悟の上でバイエルンに移籍したのだ。実際、公式戦には2試合しか出場していない。レイナにとっても、控えとしての凱旋試合である。

 サッカーのGKは試合中に交代しない。しかも圧倒的な実力差があれば、ほぼ毎試合、正GKが使い続けられる。バルセロナのテア・シュテーゲンとブラーボのようにうまくローテンションさせているケースは希だ。だから第2ゴールキーパーは、本当に特殊な職業といえる。ほぼ試合に出ないと分かっていても、正GKが試合中にケガをした時は、急きょ出番が回ってくる。セルフマネジメントは相当に難しい。野球のセットアッパーや抑えともまた違う。

 一方で、好調なチームをみていると、実は第2ゴールキーパーがムードメーカーだったりする。レイナはそのような役割に適任だ。彼はレギュラーではない覚悟ができている。ところが、若手の台頭や、不調から絶対的な正GKをベンチに追いやるケースは、監督もなかなか難しい判断を迫られる。

 イングランドの名門チェルシーで長くゴールを守ってきたペトル・チェフ(32、チェコ代表)は今シーズンから成長著しい若手のクルトゥア(22、ベルギー代表)にレギュラーの座を奪われた。2年前は、レアル・マドリード(スペイン)の象徴だったカシージャス(33)が監督判断で、正GKから降格させられた。

 その時の監督が今シーズン、チェルシーを優勝に導いた今や世界屈指の名称、ジョゼ・モウリーニョである。モウリーニュは、ベンチを温めた第2ゴールキーパーのチェフの振る舞いを高く評価している。来シーズン、チェフは移籍する可能性が高い。やはりサッカー選手は試合に出てなんぼである。

 サッカーに限らずいつ何時、自分が今の地位から降ろされるか分からない。あえて自分から後進に道を譲る場合もあるだろう。
 「あなたは第2ゴールキーパーという仕事を引き受けられますか?」と聞かれた時に、まず自分の性格を問うてみる。自己犠牲と野心がうまくバランスされているか、忍耐力と瞬発力を両方持っているか。とても高等な仕事である。グループの黒子でありながら、その存在はチーム浮沈のカギを握っている。テア・シュテーゲンのセービングと、レイナのベンチでの表情を楽しもう。

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

明豊
デジタルメディア局
局長

スポーツライターではないが、とにかくこれほどワクワクさせる試合は久しぶりだ。両者攻めるだろうから、なんとなくGKが勝負を分けるような気がする。

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