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世界で評価高まる「イチローズモルト」

埼玉の蒸留所でつくられた国産ウイスキーです
世界で評価高まる「イチローズモルト」

koukyuukannga

 「酒どころ・埼玉」のイメージを浸透させようと、埼玉県が酒蔵を観光資源に育てる取り組みを進めている。酒蔵や自治体の関係者らで構成する「埼玉の酒めぐり推進協議会」を7月に設立。また旅行業者などを対象にしたモニターツアーや、蔵開き同時開催イベントも新たに企画する。東京に近い立地を生かし、「酒めぐり」を通じて新たな客層を開拓する狙いだ。

出荷量全国4位


 埼玉県には35の酒蔵が点在しており、「神亀」(神亀酒造=蓮田市)や「金紋世界鷹」(小山本家酒造=さいたま市西区)、「力士」(釜屋=加須市)などの地酒がある。都道府県別の清酒の出荷量は兵庫、京都、新潟に次いで4位。実は知る人ぞ知る「酒どころ」だ。

 日本酒以外では協同商事(川越市)が製造する「コエドビール」や、ベンチャーウイスキー(秩父市)の「イチローズモルト」などのブランドも知られる。県はこうした酒を活用し、観光客を呼び込もうと2014年度から新たな取り組みを始めている。

 県と埼玉県物産観光協会は7月25日に「埼玉の酒めぐり推進協議会」を設立。県内の35の酒蔵や協同商事、ベンチャーウイスキーのほか22の自治体が会員に名を連ねた。県観光課の澤田直樹主査は「今後は旅行事業者や交通事業者など、さらなる拡大を図りたい」と話す。また県観光課の浜雅俊主幹は「『酒』というキーワードによる全県的な情報共有の場がなかった。横のつながりをつくる意味で、協議会を役立てたい」と強調する。

 協議会では情報共有を重視する。他県の成功事例を紹介し「埼玉でも同じようなことができる」という気運を高める。そのうえで、協議会が埼玉独自の取り組みを始める“アイデア出しの場”になることを期待する。

 埼玉県酒造組合の岸和雄事務局長は協議会設立を高く評価する一人。国内の日本酒市場は縮小傾向にあり、酒蔵の危機感は強い。酒蔵と観光が結びつけば、埼玉の地酒に縁がなかった人に目を向けてもらえる。「差別化のため宣伝やプレゼンテーションが必要という認識を共有できるいい機会になる」(岸事務局長)と期待を寄せる。

 県と県物産観光協会は旅行業者などを対象にしたモニターツアーも企画している。14年度は秋と冬に実施する予定。酒蔵見学と県が認定している「埼玉S級グルメ店」での昼食などを組み合わせる計画で、魅力ある「酒めぐり」をアピールする。また15年3月には深谷市の3酒蔵と小川町の3酒蔵でそれぞれ、蔵開きを同時開催し、併せて地域イベントも行って多くの観光客を呼び込む計画だ。

 こうした一連の取り組みについて、県観光課の浜主幹は「埼玉が兵庫、京都、新潟に並ぶ『関東の酒どころ』というイメージをつくりたい。『埼玉は酒がおいしい』と思ってもらいたい。ただイメージの定着には地道な積み重ねが必要だ」としている。

海外受注分3700本完売


日刊工業新聞2011年9月30日


 ベンチャーウイスキー(埼玉県秩父市、肥土伊知郎社長)は、10月11日に秩父蒸留所(秩父市)製のファーストリリースシングルモルトウイスキー「イチローズモルト秩父ザ・ファースト=写真」を発売する。700ミリリットル入り7500本の本数限定。欧州など海外分3700本は先行受注済み。価格は1万500円。

 今回の「ザ・ファースト」は2008年2月に稼働した秩父蒸留所で、同年5月から7月にかけて樽(たる)詰めした大麦麦芽100%の「バーボン樽熟成モルト原酒」31樽分を選び、初ブレンドした。

 バーボン樽は北米産ホワイトオーク。ウイスキーのテイストは最初に柑橘(かんきつ)系の芳香が広がり、クリームのような舌触りでそのうち甘いデザートのような風味がするという。

 肥土社長は、父が経営し倒産した酒蔵のウイスキーと樽の廃棄を防ぐため、自らベンチャーウイスキーを設立。残存していたウイスキーに自身の名を冠した「イチローズモルト」を発売、数多くの権威あるコンテストで受賞している。
日刊工業新聞2014年8月27日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
もともと国際的評価が高く、ネットオークションで破格の値段が付いたとか。まだ飲んだことはありませんが、弊社の記者は何人か蒸留所に足を運んでいます。

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