航空エンジンは「補修」で稼ぐ! IHIの遠隔監視サービス

異常検知や故障予知で機材トラブルを予防

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航空機エンジンの整備拠点である瑞穂工場(東京都瑞穂町)
 IHIの民間航空機用ジェットエンジンの遠隔監視サービスが、航空機の運航遅延や欠航に結びつく機材トラブル防止に貢献している。自社開発のITプラットフォーム(基盤)を活用し、運行中のエンジン性能のトレンド(推移・傾向)を監視。エンジンの異常検知やデータ収集、故障予知を行い、最適なタイミングで整備・修理(MRO)を遂行する。初期投資が大きく、投資回収までに15―20年近くかかる航空機エンジン事業。MROや補修部品販売が収益基盤となり、その手法は日々進化している。

飛行中にエンジンデータを収集


 民間航空機エンジンは基本的に「オンコンディション」と呼ばれるエンジンの状態に応じた整備方式を採用。定期点検に加えエンジンの劣化状態を確認し、劣化部分だけを修理する。安全面で問題ある部分だけを整備することで、最低限の費用で整備できるメリットがある。

 劣化状態はこれまで現物確認で判断していた。最近では飛行中のエンジン性能データを収集。劣化や故障の傾向と照らし合わせ、整備作業前にエンジンの状態を把握できるようにしている。「エンジンの取り降ろしや分解の必要性を事前にチェックでき、運航への影響を最小限に抑えられる」(鹿庭政人航空宇宙事業本部整備事業部プロジェクト部整備技術グループ部長)という。

 飛行中のデータは「ACARS」と呼ばれる空地データリンクシステムで航空会社が収集し、エンジンメーカーとは個々の契約でデータを提供する。IHIも米ゼネラル・エレクトリック(GE)や同プラット・アンド・ホイットニー(P&W)などエンジンメーカーと同じデータを、エンジン整備の発注者である航空会社から受けている。

 IHIはガスタービンの遠隔監視などにも用いる社内共通システム「ILIPS(IHI・グループ・ライフサイクル・パートナー・システム)」でデータを管理。インターネット経由で24時間アクセス可能で、常にデータを監視している。

将来は故障予測も自動化へ


 データ解析はさまざまな運航・環境条件で使用されたエンジン情報を一定の条件に換算。新製時の性能と実際に集めたデータを比較し、劣化の度合いや部位を特定する仕組み。鹿庭部長は「蓄積したデータを統計的手法で分析することで、不具合発生の確率も予想できる」と強調。今後は人が行っている予測を自動化する考え。

 IHIは現在、日本や欧州、アジア、中米の航空会社6社からデータを収集。足元では「データ提供に向け、さらに3社と交渉中」(鹿庭部長)という。稼働データはエンジン開発にも活用できる大きな財産で、航空機エンジン事業の拡大に不可欠な要素となっている。
(文=長塚崇寛)

日刊工業新聞2016年7月5日 機械・ロボット・航空機

COMMENT

大量の稼働中データを分析し、将来を予測する。はやりのビッグデータ解析ってやつでしょうか。ちなみに航空エンジンに限らず、飛行機はもともと飛行時間によってあらかじめ整備方法が決まっています。エンジンのなかで最も大規模な整備方法は、一個一個の部品まですべてバラして組み立て直すという、もはや「新製に近いもの」になります。ということで、今回の記事で紹介されているのはあくまでイレギュラーな故障を予知するということになるでしょう。

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