使命は「今までの延長線上ではないTDKを作ること」(石黒新社長)

石黒社長インタビュー。「動と静、両方で攻める。M&Aは今後も続ける」

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石黒社長
 TDKは成長投資として、大型の買収や業務提携をこの数カ月間で立て続けに決断してきた。在任10年の上釜健宏前社長(現会長)からバトンを受けた石黒成直社長にとっては、当初から重要局面でのかじ取りを迫られることになる。上釜体制をどう引き継ぎ発展させていくのか、6月29日付で就任した石黒社長に聞いた。

 ―トップとしてのミッション(使命)は何ですか。
 「期待されているのは、今までの延長線上ではないTDKを作れということ。真っ先にやることは、成長戦略の具体化だ。現在、核となる領域として3本を打ち立てており、そこに市場として車載、ICT(情報通信技術)、産業機器・エネルギーを設定している。このマトリックスの中で、我々が持っている技術やノウハウが何で、持っていない技術やノウハウが何か、それをどう展開していくのか。実現できる計画にブレークダウンして社員と成果を挙げる」

 ―上釜前社長と異なる“石黒カラー”はどのようなものとなるのでしょうか。
 「上釜はもともとエンジニアがベース。非常に革新的で前へ前へという、どちらかというと動の流れがあった。私は、動と静のバランスを取る」

 ―競合他社との収益力の差が目立ちます。
 「企業として稼ぐ力をどう回復するかが大きなテーマになる。これが二つ目のミッション。当社が付加価値の高い製品を提供できているか。開発だけの問題ではないだろう。販売の問題、製造の問題、経営の問題かもしれない。何が根底にあるのか、そこまでブレークダウンし、力仕事ではなく仕組みとしてワーク(機能)させる」

 ―社内の体質強化というと守りのイメージが強くなります。
 「守りではない。動と静、両方で攻める。市場と我々の素材や技術のマトリックス解析をすると当然抜けている部分がある。そこを時間を買う意味でするM&A(合併・買収)は今後も続ける。また成長戦略で狙う複数の領域にまたがることをやりたい。ICTをやることで車載も補強できるかもしれない。交点にある技術。スイスのミクロナスが、まさにクルマとセンサーの掛け算の位置にいた」

【記者の目・電子部品の世界から飛躍】
 好調な高周波部品事業は、事実上米クアルコムに売却する方向。自社での継続よりも同社とのシナジーに動いた。HDD(ハードディスク駆動装置)ヘッドで培った技術の展開、二次電池という商材、大電流領域に強い独エプコスとのシナジー。「今までの延長線上にないTDK」(石黒社長)は、狭義の電子部品という世界には収まらない。
(聞き手=米今真一郎)
【略歴】
石黒成直(いしぐろ・しげなお)81年(昭56)北大理中退、82年TDK入社。14年執行役員、15年常務執行役員。東京都出身、58歳。

日刊工業新聞2016年6月30日

COMMENT

明豊
執行役員 DX担当
デジタルメディア局長

上釜前社長は、ポートフォリオの入れ替えにメドを付け「これから自分のやりたいことをやれる」と思っていただけに、本音では続投したかったのだと想像する。それでもトップ交代に踏み切ったのは、「変化」を重視したからだろう。石黒社長があえて上釜さんとの違いを強調しているのは、なかなか興味深い。ぜひ「村田製作所」とは違う電子部品トップメーカーとしての存在感を。

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