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ミサワホーム、被災度判定計で自宅の損傷を可視化

4月から既築住宅にも展開、「日本一の観測網をつくる」
ミサワホーム、被災度判定計で自宅の損傷を可視化

被災度判定計「GAINET」表示部の操作イメージ

 ミサワホームは、同社住宅のオーナー向けに被災度判定計「GAINET(ガイネット)」を提供している。地震による一戸建て住宅の揺れの大きさや損傷具合をすばやく計測・判定し、宅内のパネルに表示して被災状況を「見える化」するシステムだ。測定したデータは携帯電話回線を通じて集約する仕組み。オーナーの迅速な安全確認や迅速な復旧サポートに役立てられる。2016年4月から既築住宅にも展開するなど普及に力を入れている。

 ガイネットは、ミサワホームとミサワホーム総合研究所(東京都杉並区)、KDDIの3社が共同開発し、15年4月に提供を始めた。住宅の基礎部分に計測装置を設置して地震波をとらえて、震度や被災度を住宅内のパネルに表示する。被災度の判定には固有の設計情報や構造情報を加味して計算するため、各戸の損傷具合を正確に導き出せる。判定結果は分かりやすく5段階で表示する。

一瞬があるのとないのでは、判断や行動が全然違う


 大地震の際は地震波の初期微動(P波)の段階で警告音を発し、危険を知らせる。“地震計”が自宅真下にあるので緊急地震速報よりも早く、正確に知らせることができる。「超直下型の場合でも一瞬構える時間ができる。その一瞬があるのとないのでは(判断や行動が)全然違う」(向山孝美商品開発部担当部長)。

 判定した震度・被災度はKDDIのLTEネットワークを通じてクラウド上のサーバーに自動で送られる。大きな地震が起こっても即座に住宅状況を把握できる。本当に困っているオーナーが判別できれば、優先度が分かり、迅速・的確に対応できる。

 向山担当部長は、「大きな地震が起こるたびに『どうにかしたい』という思いが募った」と開発にかけた思いを語る。阪神・淡路大震災や新潟県中越地震、東日本大震災といったクラスの大地震が起こると電話は通じなくなり、交通網も遮断される。住宅オーナーの情報を迅速に把握するのは不可能に近い。

 アイデア自体は10年ほど前からあったが、開発を本格化したのは10年から。LTEネットワークの整備が進み、人口カバー率が90%を突破。安定的な常時接続が可能になったことで実用化の道が開いた。

 4月からリフォーム時の採用を狙い、既築の木質系・鉄骨系一戸建て住宅も対象に含めた。同時に測定データをスマートフォンで表示できるように機能を拡充し、外出時などの使い勝手を良くした。

 当面の設置目標は累計3000台。気象庁の持つ観測地点を超えて「日本一の観測網をつくる」(同)と意気込む。観測点が増えれば地震波が到達していない地点への先回り通知や、蓄積したデータを基にした被災予測なども可能になってくる。

 普及に向け、他社が建てた住宅への採用も検討課題に挙げる。設計情報をうまく入手できれば実現の可能性も近づくが、簡単ではない。住宅市場の約8割を占めるとされる中小の地場工務店をどう取り込むか、思案を巡らせている。
(文=斎藤正人)
日刊工業新聞2016年6月27日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
「住宅×IoT」の領域以外にまだまだビジネスが出てきそう。「民泊」などの登場で不動産管理の重要性は高まってくる。

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