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ホンダ初の生え抜き女性役員は国内販売店の働き方をどう変えるのか

鈴木麻子さんに聞く「女性も営業ができれば男性も働きやすい環境になる」
ホンダ初の生え抜き女性役員は国内販売店の働き方をどう変えるのか

鈴木執行役員

 ホンダ初の生え抜き女性役員として4月、鈴木麻子氏が執行役員に就任した。アジア一筋の経歴から一転、日本本部営業企画部長を務めホーム市場を担当する。鈴木氏に国内外の女性の働き方や今後の方針を聞いた。

 ―海外経験が多いです。
 「バブル期の日本で学生時代を過ごしていたがアジア経済は発展途上だった。日本の技術を途上国に広げたいと思ってホンダに入社した。志望通り本社でアジアの事業に携わり、タイ、マレーシア、ベトナム、中国にも赴任した。ここにきて初めて日本を担当することになった」

 ―内示を受けたときの感想は。
 「新興国でやりがいを感じていた自分がホーム市場を見るとは思わず驚いた。現職の前は中国にいた。八郷隆弘社長からは『中国はもういいよ。日本に戻ってもらうことにしたから』と言われた。“女性初”について特に何か言われたことはない。ただOBらからそそのかされていつか執行役員にはなるだろうとは思っていた。これまで好きなことをやらせてもらったから女性としての責任を果たしながら恩返ししたい」

 ―具体的には。
 「販売店の働き方を変えていきたい。少しずつ変わりつつあるが、営業職は男性といったように男女の役割分担がはっきりしている。女性も営業ができれば男性も働きやすい環境になる。開発ではすでに女性視点が取り入れられているが、お客さまが使いこなせていない装備や機能があり、そういった点も女性視点から振り返りたい」

 ―海外と日本の女性の働き方はどう違いますか。
 「海外では女性だからと特別視されることはない。中国では強いリーダーシップを持つ女性店長がいたし、トップセールスも女性が多かった。日本に戻って女性の活躍の場が少ない現実を改めて認識した。日本でも多くの女性にチャンスを与える環境を作りたい」

【記者の目・国内を軌道に乗せるか注目】
 鈴木氏は中国合弁会社のトップを務め、ホンダ初の年販100万台超えを支えた功績がある。一方の国内は消費増税の影響や主力車種の相次ぐリコールで苦戦が続く鬼門だ。「女性だからと言うより、優れた能力から任命した」と八郷社長は話すが、女性の社会進出が遅れる国内でいかにして女性を活用し販売を軌道に乗せるか注目される。
(聞き手=池田勝敏)

「70万台プラスアルファで安定的に売っていきたい」


日刊工業新聞2016年6月22日


 ホンダで日本事業を統括する寺谷公良執行役員は日刊工業新聞のインタビューに応じ、国内販売の中期的な見通しについて「70万台プラスアルファで安定的に売っていきたい」と話した。足元では消費増税の延期や三菱自動車の不正問題で環境が変化するが「ホンダの受注動向は読み通り来ていて現時点で計画の修正は考えていない」とし2016年度に68万5000台とする販売計画に変更はないとした。

 軽自動車税の増税などで軽市場が減少しているが「地方を中心に軽の需要は多く中長期的には底堅い。ホンダとしても引き続き軽に力を入れる」とした。

 環境・安全技術について「ハイブリッド車(HV)を普及するのが先決。自動運転がもてはやされているがホンダとしては運転支援として現実的な技術を普及したい」とした。

 16年度の国内市場は485万台との見通しを示した上で、三菱自の不正問題について「影響は一時的で市場全体がへこむようなことはない。敵失で顧客が流れて来ているという認識はない」とした。

 寺谷氏は系列販社社長から4月にホンダ日本本部長に就任。社長時代にホンダが国内販売100万台を目指していたが主力車種の相次ぐリコールなど品質問題で揺れた。

 「高い目標を目指していた時にブランドを損なうなどの反省点があった」とした上で「台数を追うよりまずはホンダというブランドが改めて支持されるようにしたい」とし、販売現場の経験を生かしてブランド力を高めたいとの抱負を語った。
日刊工業新聞2016年7月1日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ホンダは昔から先進的なイメージのある会社だが、組織や人事は非常に保守的。優秀な女性も数多く知っているが、トヨタや日産に比べ幹部登用はすごく消極的だった。長く低迷している国内販売もそういうところに起因していると思う。あまり「女性の視点」という言葉は好きではないが、鈴木さんには大いに現場をかき回して欲しい。

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