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旭化成、シンガポールで低燃費タイヤ用の合成ゴム増産。供給過多のリスクは?

日中韓に欧州勢も加わりアジアで激しい受注争い
旭化成、シンガポールで低燃費タイヤ用の合成ゴム増産。供給過多のリスクは?

シンガポールのS-SBR工場

 旭化成は2018年度にシンガポールで低燃費タイヤ向け合成ゴムを現状比3割増産する。投資額は約50億円で、年産能力は約13万トンになる見込み。世界各国で環境問題を背景に低燃費タイヤの需要が高まっており、同社推計によると同タイヤ用合成ゴムの世界需要は20年まで年率7%で拡大する。国内外のタイヤメーカーは合成ゴムの外部調達を進めており、同社は世界トップ級の外販メーカーとして能力増強により競合他社を引き離す。

 旭化成がシンガポールで増産するのは、低燃費タイヤ向け溶液重合スチレンブタジエンゴム(S―SBR)。工場の既存設備を高効率な製造設備へ交換するなどで、生産能力を上げる。

 現在のシンガポール工場は2系列が稼働している。第1系列が13年春、第2系列が15年春に稼働し、年産能力はそれぞれ5万トン。タイヤメーカーからの受注は順調で、第2系列の稼働率も上がっており、設備改良による能力増強へ踏み切る。さらなる需要拡大を見据えて、海外での新たなプラント建設も検討する。

 S―SBRはシリカ配合の低燃費タイヤの接地面(トレッド)に使用される主要部材。自動車の燃費に影響する転がり性能や、雨天時の安全走行につながるグリップ性能、耐摩耗性を実現する。同社は「連続重合」という製法を採用。他製法と比べてコスト競争力に優れる。

 同社推計によると、低燃費タイヤ用S―SBRの世界需要は、20年に15年比44%増の約130万トン(タイヤメーカー内製含む)に成長する見通し。

 市場全体としては堅調だが、メーカーの優勝劣敗は鮮明になりつつある。旭化成と、別製法を採用するJSRは顧客からの受注を順調に獲得している。一方で、住友化学は15年度にシンガポールの製造設備を減損処理するなど、東南アジアなどでの顧客開拓に手間取っているもようだ。
日刊工業新聞2016年7月1日
米山昌宏
米山昌宏 Yoneyama Masahiro
S-SBRは、世界的な自動車の燃費規制を背景にタイヤ向けの伸びが期待され、日本、韓国、中国のメーカーがアジアでのS-SBRの能増を行ってきた。ここ数年間で、旭化成、住友化学、日本ゼオンがシンガポールで、錦湖石化、LG化学が韓国で能増した。JSRはタイでのS-SBRプラントの能増に加えハンガリーでも新プラントの稼働を計画している。来年以降も、ミシュランとチャンドラアスリの合弁がインドネシアで、ロッテケミカルの関連会社も韓国での新設プラント立上げの計画をもっている。これらの能力の増加を、需要が吸収するのには時間がかかりそうである。

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