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3Dプリンターで樹脂製の試作。モノづくりの可能性は広がるか

スワニーは射出成形用、中辻金型工業はプレス用。中小企業が競争力を高める
 3Dプリンターで樹脂製の試作型を製作する試みが、注目を集めている。スワニー(長野県伊那市)は射出成形用を、中辻金型工業(大阪府東大阪市)はプレス用の樹脂型を3Dプリンターで作り始めた。量産品と同じ材質の試作品を、従来通り金型を使うより短期間で製作できるのがメリットだ。3Dプリント技術の進化により、モノづくりの新たな可能性が見えつつある。

 「量産と同じ材料で樹脂製品をこんなに速く試作できる方法は、他にない」と断言するのはスワニーの橋爪良博社長。米ストラタシスのインクジェット式3Dプリンター「オブジェット・コネックス」シリーズを用い、射出成形用の樹脂型を製作している。

 耐久性は当然金型に劣るが、ショット数が少なければコスト、納期の面で樹脂型に優位性がある。材料開発の進展により耐久性も上がっており、数センチメートル級の成形品を作る場合、アクリル系樹脂の型だと100―200ショット程度まで使えるという。

 樹脂材料で造形する3Dプリンターは既に産業界に普及し、製品化前の形状検証などに利用されている。ただ技術上の制約により、3Dプリントできるのは装置メーカーが供給する特殊な材料のみ。

 材質が違うため、3Dプリンターで直接造形した試作品は、強度や質感などの検証に使いにくいのが実情だ。これを受けスワニーが考案したのが、3Dプリンターで樹脂型を作る「デジタルモールド」。「既に(デジタルモールド関連の)受注が始まっている」と橋爪社長はほほえむ。

 一方、中辻金型工業が手がけるのは金属プレス用の樹脂型だ。金型だと加工に時間がかかる凹凸文字刻印や複雑な曲面に3Dプリンターで作った樹脂型を適用し、納期短縮などを可能にしている。

 例えば自動車模型用のアルミニウム製ボディー。曲面を多用した難しい形状だが、5日以内で製作できるという。板厚0・5ミリメートルのA1050アルミ材を加工する場合、1000―3000回程度までプレスすることが可能。「量産に適用できる可能性も出てきた」と戸屋加代総括部長は先を見据える。

 「3Dプリンターを使うことが目的ではない。市場ニーズに応えるためのツールの一つ」とスワニーの橋爪社長は強調する。2社とも樹脂型が適さない用途には金型を用いるなど、従来法と柔軟に使い分けている。

 一般的に「本格的なモノづくりには使いにくい」と思われてきた3Dプリンターだが、発想と工夫次第でさまざまな使い道がありそうだ。装置や材料が入手しやすくなりつつある中、中小企業が競争力を高めるための手段として、注目される。
(文=藤崎竜介)
日刊工業新聞2016年6月29日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
インクジェット式の3Dプリンターは造形品の表面が滑らかに仕上がるため、型の製作に向くという。一方、熱溶解積層(FDM)式はより高強度に造形でき、治工具などへの適用が進められている。さまざまな方式の強みと弱みが整理され、最適な活用法が見いだされつつある。 (日刊工業新聞第一産業部・藤崎竜介)

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