いよいよ動き出す「キヤノン・東芝メディカル」。統合効果どこまで
*“垂直立ち上げ”へ専門組織
キヤノン傘下に入る東芝メディカルシステムズ(栃木県大田原市、瀧口登志夫社長)は、キヤノンと医療機器事業の統合効果を検討する社長直轄の専任組織を発足した。現在、国内外で統合に伴う独占禁止法の審査が行われており、両社は具体的な協議を控えている。先行して社内での準備を進め、早期のシナジー(相乗効果)創出を目指す。
発足したのは統合準備プロジェクト「パスファインダー」。名前に「統合の道筋をどうつけるかを考える」との意味合いを込めた。
キヤノンの公開情報を基に、キヤノンと自社の技術や製品・サービスをどう結びつけると効果が高いかなどを評価。その上で医療機器の生産や販売、海外展開など各方面で最適な統合スキーム(枠組み)を検証する。同プロジェクトには専任者2人、兼務者2人を置き、今後、順次増員し、検討を加速する。
キヤノンと東芝は3月、同社子会社の東芝メディカルの全株式をキヤノンに売却する譲渡契約を締結。国内外での承認を得て、東芝メディカルはキヤノンの子会社となる。瀧口登志夫社長は「今後のスケジュールは白紙。今は両社で何も話せない状況だが、それでは時間がかかる。話ができるようなってから、すぐに提案できる準備をする」としている。
東芝メディカルは2018年度に売上高5000億円、コンピューター断層撮影装置(CT)で世界首位を目標に掲げる。
瀧口社長は「各事業でやるべきことを確実に実行する。足し算するとそういう姿になる」と強調。その上で「キヤノンには魅力的な機能、実績がある。我々の中でどう活用できるかを考えるとワクワクする。新たな価値を生むことができる」と期待感を述べた。
キヤノンの医療機器事業の売上高は1000億円未満と国内では中堅規模だったが、買収により一躍上位メーカーに肩を並べることになる。
キヤノンは眼底カメラや網膜疾患の診断に使う光干渉断層計(OCT)といった眼科向け診断機器、X線デジタル撮影装置(DR)などが医療機器事業の主力製品。
先進国で加齢黄斑変性や緑内障など加齢に伴って増加する疾病の患者が増えており、眼底カメラやOCTの需要は伸びている。また眼底は体の中で直接血管を唯一見られるため、眼科以外の疾患の発見・診断にも用途が広がっている。
一方、東芝メディカルはコンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)、超音波画像診断装置が主力。CTは国内首位で、瀧口登志夫社長は「2018年度までに世界シェアも首位を目指す」と宣言する。疾病の早期発見に有用な画像診断機器は世界需要が高まっており、売上高は18年度に5000億円にまで高める計画だ。
瀧口社長はキヤノンによる買収が決まった後に開かれた新製品発表会の場で「キヤノングループの一員となり、両者の強みを生かしてシナジー(相乗効果)を創出していきたい」と強調した。
現状ではキヤノンと東芝メディカルは事業領域が異なるため相乗効果は未知数だが、医療現場のニーズ探索やマーケティング、医療機関とのネットワーク構築は両社で共同展開できるほか、販路の拡大とラインアップ拡充による提案力の強化も早期に利益をもたらすはずだ。
将来、両社は技術を融合し、日本発の医療機器の創出を目指す。キヤノンにとってヘルスケア領域は画像の撮影、処理、出力といった得意のイメージング技術を応用展開できる「期待の市場」といえる。
1941年に国産初のX線間接撮影カメラを投入して以来、カメラ事業で培ったイメージング技術を活用し医療機器を生み出してきた。イメージング技術は画像診断技術と相性が良く、東芝メディカルのCTの進化にとっても欠かせない技術だ。
「CTは医療被ばく低減が今後も大きなテーマ」(瀧口社長)であり、X線量を減らしながら診断に使える高画質な画像を撮像する技術が求められる。現在は低線量で撮影したデータのノイズを除去して画像を再構成する機能などが実用化されているが、キヤノンのイメージング技術を応用することでさらなる進化が期待できる。
MRIや超音波画像診断装置でも造影剤を使わない撮影など診断技術を高度化する余地は大きく、一層の事業拡大を追求する。
日刊工業新聞2016年4月21日
キヤノン傘下に入る東芝メディカルシステムズ(栃木県大田原市、瀧口登志夫社長)は、キヤノンと医療機器事業の統合効果を検討する社長直轄の専任組織を発足した。現在、国内外で統合に伴う独占禁止法の審査が行われており、両社は具体的な協議を控えている。先行して社内での準備を進め、早期のシナジー(相乗効果)創出を目指す。
発足したのは統合準備プロジェクト「パスファインダー」。名前に「統合の道筋をどうつけるかを考える」との意味合いを込めた。
キヤノンの公開情報を基に、キヤノンと自社の技術や製品・サービスをどう結びつけると効果が高いかなどを評価。その上で医療機器の生産や販売、海外展開など各方面で最適な統合スキーム(枠組み)を検証する。同プロジェクトには専任者2人、兼務者2人を置き、今後、順次増員し、検討を加速する。
キヤノンと東芝は3月、同社子会社の東芝メディカルの全株式をキヤノンに売却する譲渡契約を締結。国内外での承認を得て、東芝メディカルはキヤノンの子会社となる。瀧口登志夫社長は「今後のスケジュールは白紙。今は両社で何も話せない状況だが、それでは時間がかかる。話ができるようなってから、すぐに提案できる準備をする」としている。
東芝メディカルは2018年度に売上高5000億円、コンピューター断層撮影装置(CT)で世界首位を目標に掲げる。
瀧口社長は「各事業でやるべきことを確実に実行する。足し算するとそういう姿になる」と強調。その上で「キヤノンには魅力的な機能、実績がある。我々の中でどう活用できるかを考えるとワクワクする。新たな価値を生むことができる」と期待感を述べた。
映像技術と画像診断融合へ
日刊工業新聞2016年4月12日
キヤノンの医療機器事業の売上高は1000億円未満と国内では中堅規模だったが、買収により一躍上位メーカーに肩を並べることになる。
キヤノンは眼底カメラや網膜疾患の診断に使う光干渉断層計(OCT)といった眼科向け診断機器、X線デジタル撮影装置(DR)などが医療機器事業の主力製品。
先進国で加齢黄斑変性や緑内障など加齢に伴って増加する疾病の患者が増えており、眼底カメラやOCTの需要は伸びている。また眼底は体の中で直接血管を唯一見られるため、眼科以外の疾患の発見・診断にも用途が広がっている。
一方、東芝メディカルはコンピューター断層撮影装置(CT)、磁気共鳴断層撮影装置(MRI)、超音波画像診断装置が主力。CTは国内首位で、瀧口登志夫社長は「2018年度までに世界シェアも首位を目指す」と宣言する。疾病の早期発見に有用な画像診断機器は世界需要が高まっており、売上高は18年度に5000億円にまで高める計画だ。
瀧口社長はキヤノンによる買収が決まった後に開かれた新製品発表会の場で「キヤノングループの一員となり、両者の強みを生かしてシナジー(相乗効果)を創出していきたい」と強調した。
現状ではキヤノンと東芝メディカルは事業領域が異なるため相乗効果は未知数だが、医療現場のニーズ探索やマーケティング、医療機関とのネットワーク構築は両社で共同展開できるほか、販路の拡大とラインアップ拡充による提案力の強化も早期に利益をもたらすはずだ。
将来、両社は技術を融合し、日本発の医療機器の創出を目指す。キヤノンにとってヘルスケア領域は画像の撮影、処理、出力といった得意のイメージング技術を応用展開できる「期待の市場」といえる。
1941年に国産初のX線間接撮影カメラを投入して以来、カメラ事業で培ったイメージング技術を活用し医療機器を生み出してきた。イメージング技術は画像診断技術と相性が良く、東芝メディカルのCTの進化にとっても欠かせない技術だ。
「CTは医療被ばく低減が今後も大きなテーマ」(瀧口社長)であり、X線量を減らしながら診断に使える高画質な画像を撮像する技術が求められる。現在は低線量で撮影したデータのノイズを除去して画像を再構成する機能などが実用化されているが、キヤノンのイメージング技術を応用することでさらなる進化が期待できる。
MRIや超音波画像診断装置でも造影剤を使わない撮影など診断技術を高度化する余地は大きく、一層の事業拡大を追求する。