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三菱自、来月4日生産再開も下請けの連鎖倒産を防げるか

文=帝国データバンク情報部 初の倒産「安藤工業所」のケースは
三菱自、来月4日生産再開も下請けの連鎖倒産を防げるか

24日株主総会後、取材に応じた益子修会長兼社長

 三菱自動車による燃費データの不正・改ざん発覚から2カ月が経過。懸念された事態が発生した。三菱自動車の二次下請先に当たる自動車部品加工業者の安藤工業所は、6月20日までに事業を停止し、自己破産申請の準備に入った。

 1987年(昭62)7月に設立した同社は、地元自動車部品メーカーから三菱自動車向けの座席用フレームの溶接加工を受注し、設備投資に併せて処理能力を高めて業容を拡大してきた。大半が三菱自動車向けだったとみられる。

 近年は受注量の減少が続き、収益性も低調に推移していた。そうした中で、4月20日に三菱自動車が燃費データの不正・改ざんを公表。対象となる軽自動車の生産は停止した。その結果、先行きの見通しが立たず、事業の継続を断念せざるを得なかった。三菱自動車による燃費データ偽装に関連して企業倒産が判明したのは、今回が初のケースとなる。

 4月28日に帝国データバンクが発表した「三菱自動車工業グループの下請企業実態調査」によると、下請け企業数は全国で7777社にのぼる。うち、生産停止となった軽自動車の生産拠点である水島製作所(倉敷市)のある岡山県は全国で5番目に多い(構成比6・5%)。三菱自動車への依存度の高い下請け企業も多く、今回の燃費偽装問題の影響を受けやすいといえる。

 年商規模別で見ると「1億―10億円未満」の割合が52・5%と最も高い。企業規模が小さく三菱自動車からの受注に対する依存度が高いほど、その影響は大きくなる。

 日産自動車による支援が決定したものの、6月17日には06年4月以降に販売した全20車種で不正が判明したと発表している。今後の動向次第では、さらなる影響の拡大も懸念されそうだ。

まずサプライヤー60社に補償


日刊工業新聞2016年6月27日


 三菱自動車は、燃費不正問題で水島製作所(岡山県倉敷市)の軽自動車の生産ラインを停止していることに関連し、7月初めにサプライヤーへの補償金の支払いを始める。サプライヤーへの補償のほか、ライン停止に伴う従業員の一時帰休と水島製作所の減損を合わせ不正問題に伴う生産・購買費用として、2017年3月期に計350億円を計上している。7月4日にも停止中のラインで生産を再開する計画だ。

 益子修会長兼社長が24日の定時株主総会後に記者団に明らかにした。下請法対象のサプライヤーと補償を要請しているサプライヤー計60社に対し、補償額の提示を求めており、資料がそろえば7月の始めにも支払いを始める方針。対象サプライヤーは「60社で打ち止めではなく今後増えるだろう」(同)という。

 三菱自と日産自動車の販売会社、日産本体への補償金と逸失利益といった販売関連費用として400億円、不正対象車のユーザーへの補償の事務手続きや代車、新聞告知などユーザーへの補償関連費用として150億円。カタログの変更などその他費用として100億円。不正対象車ユーザーに支払う補償費用500億円を含めて計1500億円を17年3月期に特別損失として計上した。

 停止中の軽自動車ラインについて7月4日に正常に稼働するかを確認するために5台だけ生産し、5日以降は順次生産台数を増やす計画だという。
日刊工業新聞2016年6月28日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
日産主導の再建により、三菱自の車種が絞られた場合、三菱自への売上依存度の高い中小企業の経営に大きな影響を及ぼす可能性もある。1日に水島でサプライヤー向けの説明会を開く予定だが、短期の補償だけでなく、三菱自が支援して関係の深い部品メーカーの再編に踏み込んだ方がいい。

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