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「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(23)マーライオンの招き

シンガポールの六人衆、アジアのマーケティングを背負う
「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(23)マーライオンの招き

JALは14年4月にアジア・オセアニア地区支配人室をシンガポールに移した

 「天王洲にいてアジアのことが本当に分かるのか」。日本航空(JAL)アジア・オセアニア地区支配人室総務部長の高橋徹が、社長の植木義晴からこう言われたのは2013年初めのこと。アジア・オセアニア地区支配人室は文字通り、アジアとオセアニアにある10の支店を統括している。当時は本社にオフィスを置いていたが、植木から移転を促されたことで、高橋と支配人の永井大志は1年かけてアジア各国を周り、場所を選定。世界の「ヒト・モノ・カネ」が集中するシンガポールへ、14年4月に移ってきた。

 永井と高橋はアジア各国に拠点を置く商社や銀行、メーカーなどにヒアリングし、シンガポールとタイ・バンコクの2カ所に候補地を絞り込んだ。高橋はシンガポールに決めた理由を「シンガポールは域内を平均2時間程度で移動できる。バンコクだと4時間半になるので、地理的優位性が高いと判断した」と話す。

 JALの航空事業は従来、日本人の輸送が中心で、国際線のダイヤも日本を基点に考えられている。しかし近年は、日本を経由してアジアと北米を往来する三国間流動や訪日外国人の拡大などで事業構造が変わりつつある。海外支店の売上高は年々拡大しており、その重要性も高まっている。支配人室の移転も、航空会社を取り巻く市場環境の変化が背景にある。

 こうした中で、シンガポールに居を移した支配人室が植木から求められているのは、マーケティングだ。支配人室の下には、移転を機に戦略調査部が新設され、支店横断型の域内マーケティングを展開している。同部には、本社の事業創造戦略部も兼務している者もいて、域内マーケティングに基づく、新規事業のアイデアなどを提案する役割も担う。

 支配人室は6人と小所帯だが、日々域内を飛び回り、新たなサービスや新規事業につながるものはないか、目を光らせている。高橋は「アジアはLCC(格安航空会社)が多く、彼らのネット戦略や付加価値サービスが我々にも生かせないか研究している」と話す。地域に根ざしたマーケティングから、新たなビジネスやサービスが生まれる日も、そう遠くなさそうだ。(敬称略)
日刊工業新聞2015年04月10日 建設・エネルギー・生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
中東勢のターキッシュエアラインズ(旧名トルコ航空)やエミレーツ航空などが顧客満足度の高いサービスを提供する一方、LCCのエアアジアグループは短距離路線と中長距離路線を組み合わせた格安チケットを強みとしている。そのような状況で、JALはどのように差別化できるか。

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