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新型ロケット「H3」基本設計固まる。打ち上げコスト半減へ

JAXA、20年打ち上げ目指す。衛星搭載能力4トン以上
新型ロケット「H3」基本設計固まる。打ち上げコスト半減へ

H3ロケットのイメージ図(JAXA提供)

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2020年度に打ち上げを目指す新型基幹ロケット「H3」の基本設計を決め、エンジンの開発など詳細な設計段階に入った。年間6機の打ち上げを可能にするためのロケットの製造や射場設備、運用などの構想を具体化し基本設計を構築。打ち上げコストを現在の国産ロケット「H2A」の半額の約50億円とし、衛星打ち上げ輸送ビジネスにおいて国際競争力を高めたい考えだ。

 開発にはJAXAと三菱重工業IHI、日本航空電子工業などが携わる。20年度に試験機1号を、21年度に同2号を打ち上げる計画。総開発費は1900億円。

 上空500キロメートルにある太陽同期軌道への打ち上げに対応する「H3―30S」に関して、衛星搭載能力は4トン以上、打ち上げ価格を約50億円と算定した。さらに人工衛星打ち上げの受注からロケットの打ち上げまでの期間に関しては、H2Aに比べ約1年に半減できるという。

 機体の全長は最大で全長63メートル、全質量は574トン。静止遷移軌道へ6・5トン以上の打ち上げ性能を目指す。衛星を格納するフェアリング(ロケットの先頭部)は「ロング」と「ショート」の2種類を準備。輸送ビジネス市場での衛星質量が2・5から6・5トンであることから衛星重量に応じてフェアリングを選ぶ。

 さらに1段目のエンジン「LE―9」を2基か3基、固体ロケットブースター「SRB―3」は0、2、4本から選ぶ。SRB―3は小型固体燃料ロケット「イプシロン」との部品の共通化などを進め、低コスト化につなげる。

 一方、ロケットを打ち上げる種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)の射場設備に関して、H3を打ち上げるための移動発射台とその運搬車を新たに導入。また同センター内の竹崎地区にH3用の発射管制棟を新設する計画だ。

 16年度は、設計・図面の作成や燃焼試験設備の工事、一部の技術試験などを行う。4年後に迫った新型基幹ロケットの打ち上げに向け、準備は着々と進んでいる。
(文=冨井哲雄)
日刊工業新聞2016年6月28日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ロシア、欧州、米国による衛星打ち上げ市場の国際競争は激しい。国産ロケットは技術力が評価されているが、海外に比べ打ち上げコストが割高であることが大きな課題。20年にはロシアや欧州のロケットが後継機に移行する予定で、日本を取り巻く宇宙開発環境は厳しさを増す。H3の打ち上げコスト50億円は当初通りの目標でこれはあくまで必達の数字だろう。

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