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再生医療用の細胞をAIで“生きたまま品質評価”

ニコンが実現、標準化狙う
 ニコンは再生医療用細胞の品質管理向けに、画像判定による独自の細胞評価方法のデファクトスタンダード(事実上の標準化)を目指す。正常に細胞を培養できているかどうか、短時間で生きたまま評価できるのが特徴。再生医療の産業化に伴い、大量の細胞を安定供給する必要が生じるため、非破壊評価のニーズが増える見通し。世界トップクラスの研究機関との開発を加速し、多様な細胞の評価に対応する体制を整えて標準化を急ぐ。

 ニコンの技術は光学顕微鏡を用い、培養中の細胞画像を撮影し、細胞および細胞の集合体(コロニー)の大きさや形によって正常な細胞かどうか判定する。同じ種類の細胞でも培養条件により細胞やコロニーの形状は違う。人工知能(AI)で自動学習する判定機能を使い、ベテラン研究者と同様にさまざまな観点から判定する。染色など細胞に影響する操作はしない。

 現在、細胞評価方法は複数ある。デオキシリボ核酸(DNA)やたんぱく質の測定は定量的に評価できる利点がある一方、細胞を破壊する必要があり、時間もかかる。また観察で判定できる研究者も限られる。そこで、再生医療を産業化する段階では、画像判定による非破壊評価が有効とみられている。

 同社は10年前から細胞の画像判定を研究し、このほど京都大学iPS細胞研究所と再生医療の産業化をにらんだ細胞品質評価の共同研究が決まった。すでに複数株のiPS細胞の判定技術を先行して完成させている。同社は同研究所から複数台の評価設備を新規に受注しており、今後、大量培養に対応した研究を進める。
日刊工業新聞2016年6月27日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
iPS細胞研究所はiPS細胞で最高峰の研究機関であると同時に、iPS細胞供給の中心。ニコンは同研究所との技術確立によって、他の研究機関や企業に対し評価設備の採用拡大を狙う。米ハーバード大学や他の研究機関とも細胞評価の研究を進めていく計画。

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