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M&A仲介会社のIPOが相次ぐ理由

専業3社目、ストライク社長インタビュー「金融機関と共生、成長加速」
M&A仲介会社のIPOが相次ぐ理由

M&Aセミナーは海外でも盛況

 M&A(合併・買収)仲介を専門に手がけるストライク(東京都千代田区)が21日に、東京証券取引所の新興市場「マザーズ」に上場。中小企業経営者の後継者不足を背景に需要拡大が見込める一方、同仲介業は競合が多い。こうした中、上場を機に今後、どのように経営の舵を取っていくのか。荒井邦彦社長に聞いた。

 ―上場する狙いは。
 「M&Aの仲介業はこの先、(企業や事業の)売り買いの情報を持っている企業とそうでない企業に2極化していくだろう。上場で信用力が高まり、売買に関する情報を得やすくなる」

 ―M&A仲介の需要見通しは。
 「M&A仲介は二つの理由から増えていく。一つは上場企業の半数が預貯金超過にあること。株主から『成長投資に回すべきだ』との指摘も増え、資金の一部がM&Aに流れてくる。もうひとつは中小企業経営者の後継者難の問題がある。後継者に悩む経営者から仲介業に自社売却の相談がきている」

 ―金融機関がM&A仲介に力を入れ始めています。事業展開上の脅威になりませんか。
 「金融機関とは共生が成り立つ。個別案件で重なっても、大きなくくりで見ると協力者だ。地銀は事業承継に力を入れているが、自行の担当地域のみで、ほかの地域の情報は持っていない」

 ―メガバンクも仲介に乗り出しています。
 「メガバンクも同じだ。仲介業は単なる企業の売り買いのニーズに応じるのではなく、企業に欠けている資源を補うような提案が求められる。当社が売りの情報を提供して、銀行がファイナンスを手がける。銀行は貸し出しが本業だと思う」

 ―2015年8月期に売上高が前期比2倍以上、経常利益が同5倍以上と急激に伸びました。その理由は。
 「M&Aの市場拡大以上に、当社の努力による。営業能力の高いコンサルタントを採用したのが大きい。一人前になるまで3年かかるが、ここにきて戦力化してきた。M&Aは売り手と買い手の利害が合いにくい。ヒューマンスキルのある担当者ならば、売却後にも安心感を提供できる」

日本M&Aセンター、東南アジアでM&A仲介


2016年5月27日


 日本M&Aセンターは、ASEAN(東南アジア諸国連合)での中小企業M&A(合併・買収)を本格化する。先月にシンガポールで同社初の海外事務所を開設。日本企業による現地法人の売却仲介や、海外企業の買収仲介を軸に事業開始。将来は現地企業同士のM&Aも手がけていく方針だ。むやみに件数は追わず、着実に実績を積み上げ。2016年度は数件の仲介成立を目指している。

 同社は、中小企業のM&A仲介で国内ナンバーワン。ASEANでも、優れた技術や製品、販路を持つ中小企業を発掘し、現地進出を目指す日本企業とつなぐ方針だ。また、現地からの撤退に伴う企業売却にも協力する。

 シンガポール事務所は、国内からの出張者も含め4人体制でスタート。シンガポールのほか、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシアなどで事業展開する。すでに現地で情報収集やセミナーを実施しており、6月16日にはシンガポールオフィスの開設記念式典も開く予定だ。事業成長に伴い、段階的に体制を拡大していく。

 ASEANでは大手銀行や大手証券会社がM&Aのアドバイザーを務めているが、彼らは成約金額が数百億円以上のメガディールを見込んだ事業体制を敷いているため、中小M&Aを手がけにくいのが実情。

 日本M&AセンターがASEANでの中小M&Aを支援する体制を確立できれば、現地進出を狙う日本の中小企業にとってプラスとなるだろう。
日刊工業新聞2016年6月14日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
10年以上前からこの分野を取材していますが、非公開の中堅・中小企業の事業承継などをめぐり、M&Aが活用されるのは今に始まったことではありません。M&Aの仲介と聞いて、眉をひそめる経営者が少なくなり、社会的認知度が高まってきたことも背景にあるでしょう。ちなみにネットでのマッチングも、リーマン・ショック以前から行われており、新しいことのように報じるのはミスリードにつながります。

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