リハビリ医療の風景は変わるか。アシストロボットが超えるべき壁

文=三治信一朗、吉田俊之(NTTデータ経営研究所)

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装着型身体アシストロボットがリハビリに活用されている
 ロボット技術がリハビリテーション医療の風景を変えつつある。

 この4月、リハビリテーション医療において、ロボット技術が機能回復の手段として始めて評価された。装着型身体アシストロボットは人間の運動学習機能を強化すると期待される。

 しかしその適用は難病患者に限られる。今後、機能回復に適した期間に集中的にロボット技術を活用したときの機能回復効果が実証され、かつ、入院期間の短縮と早期の社会復帰といった患者側メリットを飛躍的に高めるならば、ロボット技術がリハビリテーション医療にもたらす貢献度は計り知れない。さらには、脳血管疾患等患者や運動器疾患患者までの適用拡大も見えてこよう。

 介護保険においても、政府は平成30年度報酬改定において介護ロボットの導入を目指している。利用者を直接支援するロボット技術が期待されているが、それ以上に、「支える側」を支援するロボットへの要求はひとしおだ。

 介護産業の喫緊の課題は人材不足であり、その背景のひとつに腰痛問題が潜む。腰痛問題と産業といえばこれまで道路貨物輸送業が顕著であったが、近年の報告では社会福祉施設における腰痛が加速度的に増えている。

 介護産業は人に直接触れるサービス業であるため、資本は労働集約型の側面が強い。そのため、介護事業所・施設がサービスの安定供給を約束し良質な人材の確保を求めるならば、職員に対する徹底した健康管理と健康サポートが欠かせない。

 利用者の立場からしても、腰痛を抱えるスタッフに安心できないだろう。そのため、同じロボット技術を応用するにしても、介護産業では「支える側」をアシストする製品領域の拡大が期待される。

装脱着プロセスの効率化と重量問題


 装着型身体アシストロボット産業の拡大には超えるべき二つの壁がある。一つはロボットの装脱着プロセスの効率化だ。現在は理学療法士など3人で患者に装着し時間も30分を超えることも少なくない。

 ロボット導入を意思決定する際に経営者はこの機会費用を無視できない。したがって、開発段階から装脱着時の工数を強く意識した技術設計が必要となる。もう一方は徹底した軽量化だ。重量問題が解決されない限り、医療・介護専門職は既存の治療・介護技術を離れロボットを活用した新技術に転換しない。

 さりとて人がじかに触れるロボットなので安全性と耐久性の視点は無視できない。ならば消費財型のロボット製品はあり得るか。この二つの壁の先には、ロボット技術が大活躍する医療や介護の世界があるはずだ。

日刊工業新聞2016年6月24日

COMMENT

石橋弘彰
相模支局
支局長

介護向けロボットの究極の目標は、要介護者が独りで日常的な生活をこなせるようにすることだ。だが、現状の技術ではそこには遠い。現場の声を聞くと「介護する人の負担が減るだけでもだいぶ職場環境が良くなる」という。さまざまな介護向けロボットの研究開発を進めることは重要だが、介護する人たちをアシストするロボット技術を急ぎ社会実装する方策や支援も必要だ。

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