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国内IT大手、「ブロックチェーン」技術をIoTや基幹システムなどに転用

金融業以外の産業用途で活用が進むか
 大手IT各社は仮想通貨の基盤として知られる「ブロックチェーン(分散型台帳技術)」について、IoT(モノのインターネット)や基幹システムなど産業分野に転用する。NECは2016年度中に、ブロックチェーンを実装したBツーB(企業間)向けプロトタイプ(試作版)を開発する。富士通は金融業向け技術に加え、広範に応用できるように開発に着手した。IoTやサプライチェーン内でのデータ共有、個人間での取引などに転用し新市場の開拓で先行する。

 各社は金融機関が先導するブロックチェーンの実証実験に参加する一方、金融以外の幅広い分野で応用できないか検討している。

 NECは多数あるブロックチェーンの中でも実績が豊富な「イーサリウム」を軸にプロトタイプを開発する。イーサリウムの普及を後押しする米マイクロソフトともクラウドの活用で連携する見通し。NECが加わる異業種連携コンソーシアム内でもブロックチェーン研究会が発足しており、三井住友銀行トヨタ自動車、電通などの参加企業と用途開発に取り組む。

 日本IBMはオープンソースのブロックチェーン「ハイパーレジャー」を中核に据えて、ブロックチェーンに対応する先進的な業務アプリケーション(応用ソフト)の開発支援に着手した。クラウド基盤上でブロックチェーンを試行・開発できる仕組みを構築し、実用化支援で先陣を切りたい意向だ。

 富士通は富士通研究所と連携して、産業分野への転用に向け、アイデアの実現性を試すPoC(概念実証)を展開する。また業種横断型のプライべートブロックチェーンなどのプロトタイプの開発を急ぐ。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ブロックチェーンは取引記録や資産登録簿などのデータについて、低コストの「ピア・ツー・ピア」型の分散ネットワークで安全に共有・管理できる仕組み。決済や証券・債券取引を行う金融業向けに実用化が進んでいる。ただ技術標準や用途が確定しておらず、試行錯誤が続いている。IT各社の本格参戦により、金融業以外の産業用途でもブロックチェーンの活用が進む公算が大きい。

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