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英国民投票でEU離脱派勝利。「事業への影響慎重に評価」(日立社長)

日本の産業界の声。「2年間はEU全体の不透明感高まる」(日商会頭)
英国民投票でEU離脱派勝利。「事業への影響慎重に評価」(日立社長)

英国に鉄道車両工場を稼働させた日立

 23日の英国での国民投票の結果、欧州連合(EU)離脱派が勝利した。実際のEU離脱はまだ先だが、いざ離脱となれば欧州の長期的な不安定化や日米との連携にも悪影響を与えることになる。日本の経済界も経済の先行きや、EU諸国での離脱追随の動き、各国の内向き志向に拍車がかかることを強く懸念する。また為替が円高に振れることによる悪影響を心配する経営者も多い。

日EUのEPA交渉に影響も


 経団連の榊原定征会長は24日、都内で記者団に「大変残念だが、英国民の判断の結果と受け止めるしかない」と述べ、マーケットは過剰に反応しないよう冷静な対応を求めた。日EU経済連携協定(EPA)を積極推進してきた英国がこの枠組みから外れることについては「何らかの影響はあるかもしれないが、2016年内の最終合意を目指して交渉が進展することを期待したい」とした。

 日本商工会議所の三村明夫会頭は、「少なくとも今後2年間は英国だけでなく、EU全体の不透明感が高まり、企業心理にも大きな影響が及ぶ」と述べた。経済同友会の小林喜光代表幹事は「歴史の転換点が近づいている」との認識を示した。日本にとっては、財政出動や金融緩和などの策を講じても「グローバルな状況の中では、あっという間にその力以上に覆されてしまう要素が多い」と指摘する。

 英国のEU離脱が決まり、日立製作所の東原敏昭社長兼最高経営責任者(CEO)は「今後、当社の事業への影響を慎重に評価し対応を検討していく」とのコメントを公表した。日立は英国を鉄道事業の重要拠点の一つに位置付ける。15年9月にはダーラム州に約150億円を投じて車両工場を立ち上げた。当面は英国国内の鉄道会社を相手に取引するが、将来は欧州各国にビジネスを広げる戦略を描いていた。 

 世界市場で存在感を示す日本の板硝子メーカーは企業買収により欧州市場でのシェアを拡大してきた経緯があり、英国がEUを離脱し、欧州経済が冷え込む場合、販売量の落ち込みや現地通貨の下落など、業績への影響は避けられない可能性が高い。

 特に世界シェア2位の日本板硝子は06年に欧州や北米、南米に強い販路を築いていた英ピルキントンの大型買収を実施し、欧州市場を手中に収めた経緯がある。日本板硝子の16年3月期の売上高は約6300億円。うち、英国を含む欧州の売上高は約2500億円と全体の4割弱を占める主要マーケットとなっている。
日刊工業新聞電子版2016年6月24日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
早くもキャメロン首相が辞任を表明、スコットランドがEUの残留を表明。市場は混乱するだろうが、各企業の経営者、さらには政治家は「歴史の転換点」にどう向き合うか。冷静に状況を見守る胆力と歴史を読み解く知力が試される。

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