「日本人だけではもったいない」東京・多摩で外国人採用進む(上)

海外市場、母国語で深耕

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吉本製作所に今年3月入社したベトナム人のチャン・ホン・キエンさん。MCのオペレーション業務を担当する
 東京・多摩地域の中堅・中小企業で、技術系を中心とした外国人の採用が広がっている。国内での慢性的な採用難に加え、最近の「売り手市場」が背景にあるが、海外市場での販路拡大のために、海外の人材を積極的に採用する前向きな動きも出てきた。各社は単なる労働力の確保ではなく、海外での成長への布石となるエンジンとして、外国人採用を積極化させている。

 厚生労働省が5月末に発表した4月の有効求人倍率は前月比0・04ポイント上昇の1・34倍で、1991年11月以来の高水準。都道府県別では東京都が2・02倍で最も高い倍率となった。

理工系大卒得るためにベトナムへ


 「確かに日本人、特に理工系人材の採用は難しい面がある。一方でベトナムには優秀な人材に“遭遇”する確率が高い。日本人だけに目を向けていてはもったいない」―。精密機器の金属加工を手がける吉本製作所(東京都青梅市)の吉本誠社長はこう強調する。

 同社は日本などから受注した金属加工をベトナムの現地加工会社に再委託する営業所をベトナム・ホーチミン市に開設。16年4月には現地法人「吉本ベトナム」に格上げした。

 ベトナムでの市場開拓と深耕を図るため、吉本製作所は15年12月と16年3月に1人ずつベトナム人大卒者を採用。ホーチミン工科大学とホーチミン師範大学の理工学部出身で、日本ではマシニングセンター(MC)のオペレーション業務を担当する。吉本社長は「本人の希望にもよるが、将来的にはベトナム子会社で働く選択肢もある。母国の人材は海外市場の深耕には欠かせない」と指摘する。

中国での技術営業を重視


 粘着剤や機能性フィルムなどを製造販売するコスモテック(東京都立川市)は15年4月と16年4月に中国人留学生を1人ずつ採用した。

 同社は02年に中国・蘇州に工場を建設。中国の現地企業との取引が増え、今では「8割が中国を中心とした海外での売り上げだ」と高見沢友伸社長。「08年のリーマン・ショック後、日系企業の中国撤退が相次ぎ、自力で販路を開拓しなければならなくなった。技術営業ができる人材が今後ますます重要になる」と話す。


<コスモテックに昨年4月に就職した中国人の耿志亮さん。フィルムに塗布する粘着素材を試作中>

貿易実務の要員


 自動車用ブレーキ部品などを製造販売するムラコシ精工(東京都小金井市、村越雄介社長)は、16年度中に貿易実務を担当する技術営業として海外の人材を採用する予定だ。米国人やカナダ人など北米地域を中心に検討する。

 同社は4月に海外営業部を新設し、海外販売ルートの構築を本格化する。海外営業を統括する増田直一郎執行役員は「09年から東南アジアを中心に販路開拓してきた。ただ自動車の最大市場は米国。同地域の開拓には言葉のニュアンスや交渉力などの点で地元の人材が必要」とする。

 各社とも自社がターゲットとする市場に強い人材を採用する点で共通している。その裏には国内市場が縮小する中で、海外で稼げる企業への脱皮が急務との考えがある。
(文=西東京・尾内淳憲)

日刊工業新聞2016年6月22日 中小企業・地域経済2面

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

単なる労働力の確保だけでなく、強化のために海外の人材を積極的に採用する流れが生まれています。同じ地域に外国人を採用する企業が増えれば自然と外国人コミュニティができ、人材の定着にもつながりそうです。

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