三菱自、株主総会。タコツボ文化の改革は日産からの人材が鍵握る
<追記あり>「軽」生産再開も部品メーカーや販社は安堵より不安
三菱自動車は24日に千葉市内で株主総会を開き、新たな経営体制が始動する見通しだ。燃費試験データの改ざんなど法令違反が次々と明らかとなり、総会では株主による経営責任の追及が避けられず紛糾が予想される。7月上旬をめどに軽自動車4車種の生産販売再開を目指すが、部品メーカーや販売会社からは、問題発覚前の販売水準に戻せるのか不安視する声も聞かれる。信頼回復には日産自動車との協業をテコに、再発防止の徹底や事業の選択と集中が求められている。
(左から益子氏、山下氏、白地氏、池谷氏)
新体制では益子修三菱自会長が社長を兼務し、白地浩三常務執行役員が海外担当の副社長に昇格する。日産元副社長の山下光彦技術顧問を開発担当、三菱東京UFJ銀行の池谷光司専務執行役員を財務担当の副社長に迎え入れる。
「燃費不正問題の特別損失が上振れすることはない。かなり保守的に見積もりをしている」。株主総会前の22日、三菱自は2017年3月期連結業績見通しを発表。同日の会見で黒井義博常務執行役員は燃費問題が業績に与える影響を最大限に織り込み、この問題を17年3月期決算で収束させたい考えを示した。
三菱自は4月20日に停止した軽4車種の生産販売を7月上旬をめどに再開する方向で準備を進める。約2カ月間に及ぶ生産販売停止などの影響額を2050億円に膨らむと見込む。このうち営業利益への影響額は550億円と試算。17年3月期の国内販売が前期比4割減の6万台に落ち込むのが響く。うち軽は同約5割減の2万8000台と予測する。4―5月の軽の販売実績は2389台。「再開しても燃費が勝負の軽では販売は厳しい」(三菱自幹部)との見方もある。
三菱自が7月上旬に軽自動車の生産・販売を再開することについて、三菱自のサプライヤーとディーラー各社は安堵(あんど)の声を漏らす。水島製作所がある岡山県倉敷市内の部品メーカー首脳は「生産再開の時期は思ったより早かった。ひとまず、ほっとしている」とし、部品の供給再開に向けて準備を始めた。
ディーラーも「まだ(三菱自から)販売再開の連絡を受けてはいないが、待っているお客さまもいるので再開が本当なら大歓迎だ」(関東地区のディーラー関係者)と喜ぶ。
一方で、先行きを不安視する声も多く聞かれる。関東地区の三菱自のディーラーは「燃費不正問題でブランドイメージが大きく下がってしまった今、軽がどれくらい売れるかは分からない」と困惑する。
東海地区のディーラーは「軽のかわりに別の小型車を勧めているが売れない」とし、ブランドイメージの低下に頭を抱えている。
エンジン部品を納める部品メーカーの首脳も「軽向けの部品は、当面難しい状況が続くだろう。三菱自以外の販路を広げる活動を進める必要がある」と厳しい見通しを示す。
軽の生産・販売停止による補償については「当初の発注に基づき作ってしまった部品と部品の保管にかかった費用は全額補償してほしい」(外装部品メーカー首脳)、「本当は自宅待機していた従業員の人件費分も要請したいが、おそらく難しいだろう」などの声が上がっている。中には「補償されても後で多めに原価低減を要求されるかもしれない」(外装部品メーカー首脳)との懸念もある。
また、三菱自が日産傘下に入ることで取引を見直すなどビジネス上のリスクを懸念する声もあがる。東京商工リサーチ名古屋支社が三菱自と取引する愛知県内の一次下請けを対象に実施した調査では、三菱自の日産傘下入りで自社に影響すると応えた企業のうち、45%が取引減少などマイナスの影響があると回答した。
ある三菱自の部品メーカー首脳は「競争力をつけないと、ゆくゆくは淘汰(とうた)されるだろう」と見通す。
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三菱自動車に対して、一般の人が抱いている印象は、「燃費データをごまかした会社」ということだ。それが、軽自動車のどの車種であるかは、もはや問題ではない。であるからこそ、事態は深刻だ。ブランドイメージの毀損は、軽自動車という製品だけでなく、会社全体に及ぶ。ダメージ範囲を限定化できない状態にある。それは販売台数の減少などという目前の影響に留まらず、人材の採用など中期的な事業運営にも、少なからずネガティブに働くと考えるべきだろう。
(左から益子氏、山下氏、白地氏、池谷氏)
新体制では益子修三菱自会長が社長を兼務し、白地浩三常務執行役員が海外担当の副社長に昇格する。日産元副社長の山下光彦技術顧問を開発担当、三菱東京UFJ銀行の池谷光司専務執行役員を財務担当の副社長に迎え入れる。
「燃費不正問題の特別損失が上振れすることはない。かなり保守的に見積もりをしている」。株主総会前の22日、三菱自は2017年3月期連結業績見通しを発表。同日の会見で黒井義博常務執行役員は燃費問題が業績に与える影響を最大限に織り込み、この問題を17年3月期決算で収束させたい考えを示した。
三菱自は4月20日に停止した軽4車種の生産販売を7月上旬をめどに再開する方向で準備を進める。約2カ月間に及ぶ生産販売停止などの影響額を2050億円に膨らむと見込む。このうち営業利益への影響額は550億円と試算。17年3月期の国内販売が前期比4割減の6万台に落ち込むのが響く。うち軽は同約5割減の2万8000台と予測する。4―5月の軽の販売実績は2389台。「再開しても燃費が勝負の軽では販売は厳しい」(三菱自幹部)との見方もある。
「競争力をつけないと、ゆくゆくは淘汰される」(部品メーカー首脳)
三菱自が7月上旬に軽自動車の生産・販売を再開することについて、三菱自のサプライヤーとディーラー各社は安堵(あんど)の声を漏らす。水島製作所がある岡山県倉敷市内の部品メーカー首脳は「生産再開の時期は思ったより早かった。ひとまず、ほっとしている」とし、部品の供給再開に向けて準備を始めた。
ディーラーも「まだ(三菱自から)販売再開の連絡を受けてはいないが、待っているお客さまもいるので再開が本当なら大歓迎だ」(関東地区のディーラー関係者)と喜ぶ。
一方で、先行きを不安視する声も多く聞かれる。関東地区の三菱自のディーラーは「燃費不正問題でブランドイメージが大きく下がってしまった今、軽がどれくらい売れるかは分からない」と困惑する。
東海地区のディーラーは「軽のかわりに別の小型車を勧めているが売れない」とし、ブランドイメージの低下に頭を抱えている。
エンジン部品を納める部品メーカーの首脳も「軽向けの部品は、当面難しい状況が続くだろう。三菱自以外の販路を広げる活動を進める必要がある」と厳しい見通しを示す。
軽の生産・販売停止による補償については「当初の発注に基づき作ってしまった部品と部品の保管にかかった費用は全額補償してほしい」(外装部品メーカー首脳)、「本当は自宅待機していた従業員の人件費分も要請したいが、おそらく難しいだろう」などの声が上がっている。中には「補償されても後で多めに原価低減を要求されるかもしれない」(外装部品メーカー首脳)との懸念もある。
また、三菱自が日産傘下に入ることで取引を見直すなどビジネス上のリスクを懸念する声もあがる。東京商工リサーチ名古屋支社が三菱自と取引する愛知県内の一次下請けを対象に実施した調査では、三菱自の日産傘下入りで自社に影響すると応えた企業のうち、45%が取引減少などマイナスの影響があると回答した。
ある三菱自の部品メーカー首脳は「競争力をつけないと、ゆくゆくは淘汰(とうた)されるだろう」と見通す。
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ファシリテーター・原直史氏の見方
三菱自動車に対して、一般の人が抱いている印象は、「燃費データをごまかした会社」ということだ。それが、軽自動車のどの車種であるかは、もはや問題ではない。であるからこそ、事態は深刻だ。ブランドイメージの毀損は、軽自動車という製品だけでなく、会社全体に及ぶ。ダメージ範囲を限定化できない状態にある。それは販売台数の減少などという目前の影響に留まらず、人材の採用など中期的な事業運営にも、少なからずネガティブに働くと考えるべきだろう。
日刊工業新聞2016年6月24日の記事から抜粋