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世界の半導体市場、今年はスマホ減速で2.4%減。その後は緩やか成長

IoTなど次世代向け伸び期待
 スマートフォン市場の鈍化による影響が、半導体市場でも顕在化してきた。世界半導体市場統計(WSTS)が公表した予測では、2016年の世界半導体市場は15年比2・4%減の3271億ドルとなる見通し。18年までの年平均成長率も0・6%と微増の予測だ。ただ今後は先進運転支援システム(ADAS)やIoT(モノのインターネット)、次世代通信向けの需要増が期待される。成長市場を狙い、国際競争が一段と激化して業界再編も加速しそうだ。

 16年の市場統計によると、製品別では主にスマホに使われるIC分野が唯一減少して、15年比3・4%減の2651億ドルを見込む。中でもメモリーが同10・2%減の693億ドルと大きく落ち込む見通し。

 一方、中期的には緩やかに伸びる公算が大きい。17年以降はプラス成長に転じる見通しで、18年の世界半導体市場は15年比1・7%増の3409億ドルになると予測する。17年と18年は光デバイスやセンサーなどが伸び、それぞれ前年比2%増、同2・2%増で推移する見込みだ。

 地域別の18年の半導体市場は、米国が15年比3・6%減の662億ドル、欧州が同3・1%増の353億ドル、日本が同1・1%増の314億ドル、アジア・パシフィック地域が同3・4%増の2078億ドルになる見通し。欧州では主に車載向け、アジア・パシフィックでは新興国でのスマホ需要を中心に市場が拡大していくと見られている。

 製品別の18年の半導体市場は、ディスクリート(個別半導体)が15年比6%増の197億ドル、光デバイスが同10・5%増の367億ドル、センサーが同15・0%増の101億ドル、ICが同0・1%増の2743億ドルと予測した。18年までの年平均成長率は光デバイスが3・4%、センサーが4・8%と高い水準を保つ。

 中期的にはIoTの普及によりセンサー類の需要拡大や、ADAS向け車載機器への採用増が期待される。このため光デバイスやセンサーは高水準を維持すると想定される。

 スマホ市場の鈍化が鮮明になる中、新たな分野が全体の市場成長を左右するのは間違いない。成長市場を巡る競争に備え、販路や技術を補完し合うような合従連衡が加速する可能性がある。
日刊工業新聞2016年6月24日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
2015年の実績は14年比0・2%減の3351億ドル。2年連続での市場は縮小する予測だ。しかし車載半導体は、これから年率10%超で伸びるともされる。成長のけん引役として大きな期待がかかる。もう一つ各社が力を入れ始めているのが、FAやロボットなどの産業機器向け半導体。IoTやインダストリー4.0の普及で成長が見込まれている。市場成長に備え、強みを伸ばし弱みを補うような外部との連携や、成長戦略上に乗らない事業の切り出しといった対策は活発になってきている。成長分野で戦うには、素早い動きが不可欠だ。

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