国の肝いり、保険適用になった介護ロボット。本格利用で欠かせないもの

文=三治信一朗、林直樹(NTTデータ経営研究所)実証データの整備を

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ロボット技術を搭載した歩行車「リトルキーパス」(幸和製作所提供)
 国の肝いりで、介護分野のロボット市場の伸びが期待されている。その一端が、介護保険の適用である。本年の3月には、わが国で初めて介護ロボットが介護保険の対象となりレンタル料に対する保険給付が決まった。

 対象となった自動制御機能付き歩行器は、上り坂でのモーターアシスト、下り坂での自動ブレーキ、転倒の原因となる急速な速度変化を検知しブレーキを働かせることが可能であり、センサー系、IC制御系、駆動系などのロボット技術が結実した結果、利用しやすい機器となった。

 筆者らが実際に歩行器を利用してみた感想は、坂道発進などがとてもスムーズであり、坂の斜め走行でも車体が安定していた。高齢者が坂道を登りきった後の一呼吸を置く際に気を抜いた後であっても、ストッパが利いているという安心感は大きいと感じた。

 この歩行器の使用により、高齢者の生活行動範囲が大きく広がることはもとより、体への負担が軽減されることも確かめられている。坂道は上りだけではなく、下りもある。こうした坂道の起伏は思ったよりも高齢者にとって高い壁となるが、それを乗り越えられずに行動範囲が限定されていた高齢者にとっては福音となろう。

現場の理解大切


 介護保険適用を決める国の会議では、介護ロボットの導入基準を機能面、安全面、経済面の3点から評価すべきであると指摘している。これらの評価を適切に行うには、ロボットを使用する環境、対象となる人、周囲を支える介助者に対する理解をもとに実証することが必要不可欠である。

 ロボットや人工知能が人と代替することで、人の仕事が奪われるという主張もある。しかし、人に技術が生かされることで、その効果は人に還元されると信じる。ロボットを導入する状況や環境の分析に始まり、導入する前後工程の理解がきちんとできて初めて全体の効率化が可能になる。

 最近注目の再生医療でも、細胞治療後の脊椎損傷のリハビリ現場でリハビリ支援ロボットの導入が検討されているが、これは再生医療の治療効果を測定するために、理学療法士ごとの治療の巧拙を平準化するために考え出されたものである。

 とかく、技術を使いこなすということは、その利用シーンを想起することから始まる。その技術利用が、誰を幸せにするのかの創造性が大切だ。人を対象とした導入実証の評価は一筋縄ではいかない。何より現場の理解が大切だ。現場理解の深化が、新たな導入機会を促進し、現場そのものを進化させる。

COMMENT

石橋弘彰
相模支局
支局長

介護分野はロボットの実用化が期待される分野だが、市場規模の小ささが参入阻害要因になっている。それでなくてもロボットの研究開発は長期間で多額の投資を必要とし、投資を回収するまでに時間がかかる。研究開発の負担を低減する政府や自治体からの支援も介護分野のロボット適用には重要となるだろう。

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