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単価が下がるインバウンド。どうする流通各社

マツキヨは専用のPB開発へ
単価が下がるインバウンド。どうする流通各社

マツモトキヨシホールディングスの免税対応店(東京・有楽町)

 流通業界が訪日外国人旅行者(インバウンド)の対応で、次の一手を打ち始めている。2015年度のインバウンド数は2000万人超に達し、百貨店やドラッグストア、家電量販店などといった業態に“特需”をもたらした。しかし、16年は為替が円高に振れており、お得意様だった中国人旅行者の需要は“爆買い”がなりを潜め、中国経済減速の影響も出始めている。インバウンドの恩恵を受けてきた業態は、財布のひもが固くなるインバウンドのニーズ掘り起こしに知恵を絞り始めた。

日用雑貨伸びる


 流通業界の中でも早くから、インバウンド需要の獲得に力を入れてきたドンキホーテホールディングス。だが、最近のインバウンドのニーズの変化を指摘する。ドンキでは15年6月期の第2四半期(14年10―12月期)に、売上高構成比で49%を占めていた高額の時計・ファッションが、16年6月期の第3四半期(16年1―3月期)には29%まで縮小、これに代わるように低単価の日用雑貨が第2四半期の32%から、第3四半期は44%まで拡大したという。

 百貨店でも客数は引き続き増加しているものの、「客単価が低下している」という指摘が相次ぐ。円高進行もあるが、中国政府の輸入品の関税強化もあり、爆買いを支えてきた業者筋による中国国内での高値転売を目的とした大量買い需要が剥落。一般消費者主体の購買が中心となっているからだ。

 インバウンド数自体は増加が見込まれるが、購入単価が落ちている分、買い上げ点数を増やしてもらうか、客数を一段と増やさなくてはならなくなっている。

 ラオックスは日本国内での需要取り込みもさることながら、インバウンドの自国、“水際”で需要を獲得する戦略に打って出る。中国最大規模のクルーズ船ターミナル港である上海呉松口国際郵輪港を運営する、上海呉松口国際郵輪港発展有限公司(上海市)と連携する。

「水際免税店」と情報共有


 ターミナル港での広告の運用や、ターミナル内での店舗運営などを展開する。例えば、出国前にこの店舗で商品の購入を予約。商品は日本国内の店舗で受け取れるようにし、日本では観光などに多くの時間を割いてもらう仕組みを築く。

 また、7月には台湾に初めて出店、日本製品を扱う免税店を開くなど、いわゆる水際でインバウンドの需要を取り込む戦略だ。

 インバウンドもすでに2度目、3度目というリピーターも少なくないとみられる。こうした慣れたインバウンドにマッチした商品を開発したり、仕入れたりという戦略も必要になっている。

 マツモトキヨシホールディングスではプライベートブランド(PB)「matsukiyo」で、インバウンドのニーズを反映した商品を開発する方針だ。マツキヨではすでに免税対応店が300店を超え、免税売上高が全体の10%程度ある。だが、今後は1店ごとの消費動向を分析し、ニーズに合った商品の仕入れや開発を展開する。

 免税店で現在、どんな商品が売れ筋かをマツキヨ各店で共有。この消費動向分析に基き、PBで中国語圏、タイやベトナムなど国を意識した商品を仕入れたり開発したりと、きめの細かい戦略だ。

 インバウンド消費が安定成長に入るなかで、今後は客数や客単価を上げる取り組みが、需要取り込みのカギを握りそうだ。
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
インバウンド対応は今年が正念場です。新しい仕掛け、新しい展開に集客力を強化するか、コトと組み合わせ売りあげ拡大を図るのか、はたまた、これまでとは違う枠組みを作るのか。インバウンドで潤ってきた流通各社に注目です。

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