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世界遺産登録へ!「明治日本の産業革命遺産」(萩市編)大河ドラマもニンマリ?

「松下村塾」など五つの資産、今夏に正式決定へ。門下への教えは明治で開花した
世界遺産登録へ!「明治日本の産業革命遺産」(萩市編)大河ドラマもニンマリ?

「萩反射炉」は試験炉と考えられている

 幕末、欧米列強によるアジア進出への脅威に対し、危機感を持った西南雄藩を中心に海防力強化のため産業近代化への試行錯誤が行われた。萩(長州)藩では西洋式大砲鋳造を目指し反射炉の建設が進められた。当時反射炉の操業に成功していた佐賀藩に出向き、持ち帰ったスケッチをもとに萩反射炉が築造された。

 地元の安山岩とふぞろいなれんがで積み上げた煙突は、藩内の石工、陶磁工、鋳物師などの職人技術を集め自力で作りあげた。この反射炉は試験炉で、本式の建設は技術・費用面でならなかった。

「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」の中で萩市には「萩反射炉」「恵美須ヶ鼻造船所跡」「大板山たたら製鉄遺跡」「萩城下町」「松下村塾」の五つの資産がある。これらの遺産群は非西洋の国が短期間に自力で近代化を行ったことを全体で示している。

 桂小五郎(木戸孝允)から藩主に送られた軍艦造船の意見書によって設けられた恵美須ヶ鼻造船所跡では2隻の洋式軍艦(丙辰丸・庚申丸)が建造された。丙辰丸建造の際に用いられた船釘や碇などの原料鉄は、日本の伝統的な製鉄製法であるたたら製鉄によって造られ、洋式技術と在来の技術を合わせた新しい日本の船造りが行われた。

 西欧からの産業技術導入初期、産業近代化や技術導入の方針は国ではなく藩という地域社会によって進められた。萩城下町は三つの区域で構成されており政策決定が行われた城跡、身分が高い武士の屋敷があった旧上級武家地、碁盤目状に町屋や中・下級の武家屋敷が軒を連ねていた旧町人地の町割りは現在も残っており封建時代の様相を今に残す。

 日本の西洋近代化をいち早く唱えた吉田松陰が開いた松下村塾。2年10カ月の間に学んだ門下の人材は近代産業化に大きな役割を担い、その教えは明治で開花した。
日刊工業新聞2015年05月04日 1/2面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
大河ドラマ「花燃ゆ」はあまり視聴率がよくないらいしいが、それはさておき、萩を再訪したくなった。またすごく混むでしょうが。

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