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空の覇権争う・独ルフトハンザの戦略(下)ハブ空港、世界標準に

航空機に投資
**各社の部門統括
 ドイツのルフトハンザドイツ航空の2015年の売上高は、前年比7%増の321億ユーロ(約4兆円)と過去最高となった。ルフトハンザは、05年にスイスインターナショナルエアラインズ、09年にオーストリア航空などを買収し、事業規模を拡大。00年の売上高は152億ユーロ(約1兆8000億円)だったが、この15年で2倍以上に伸ばしている。

 事業拡大に不可欠となる機材は、25年までに251機を発注。投資額は400億ユーロ(約5兆円)に上り、独企業としては過去最大の投資額。航空機の発注数は、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイを拠点とするエミレーツ航空などの中東勢に次ぐ規模だ。

 一方、買収などで拡大する組織をスリム化するため、各社の部門統合も進める。マーケティング部門はルフトハンザ、レベニューマネジメントなどの収益管理部門はスイス、座席やサービスなどの開発部門はオーストリアが担い、それぞれの拠点に機能を集約。数年以内にマネージャークラスの人員を15%程度減らし、25年までに500万ユーロ(約6億円)のコスト削減を目指している。

オーストリア航空は日本から撤退


 こうした中、オーストリア航空は、27年間運航してきた成田―ウィーン線を9月に廃止し、日本市場から撤退する。

 ウィーンへの旅客需要は大半が観光で、ここまで路線を維持してきた。ルフトハンザのドナルド・ブンケンブルク日本支社長は「撤退はあくまでオーストリア航空の判断」としたが、傘下のブランドは残す一方、こうした路線の統廃合は今後増えることになりそうだ。

 全日本空輸(ANA)は航空連合「スターアライアンス」での連携を通じ、11年からルフトハンザと共同事業を実施しており、双方の航空券を販売するなど、関係が深い。

ANAもうなる「洗練された戦略」


 ルフトハンザの企業努力によって、ミュンヘンをはじめとしたハブ空港での乗り継ぎが短縮され、ネットワークが広がることは、ANAのサービス向上にもつながる。ANAの幹部はルフトハンザについて「非常にソフィスティケーテッド(洗練)されていて、見習うことが多い」と話す。

 ルフトハンザの手法や戦略は、パートナーであり、同時に競合でもあるANAの目にも、巧みで先進的に映っている。

 ルフトハンザのカーステン・シュポワ最高経営責任者(CEO)は、ミュンヘン空港のサテライトターミナルを「新たなスタンダードの確立」と称した。ルフトハンザの目指す姿は、自らの取り組みが、やがて世界のスタンダードになること。世界の航空市場をリードし続けるため、その手が緩むことはない。
日刊工業新聞 2015年06月14日
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
航空市場の覇権争いは、国境を越えた出資なども増えていて、日々厳しさを増しています。日本はまだまだ規制も多く、世界の競合と戦って行くには、難しい部分もあります。一部で空港運営の民営化も始まっていますが、日本として競争力を高めるためにどうすべきか、考えていく必要があるのかなと思います。

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