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IHIが航空機エンジンでIoTの王道を歩み出した

整備能力2倍に。遠隔監視システムでどこまでビジネスモデルを変えられるか
IHIが航空機エンジンでIoTの王道を歩み出した

航空機用エンジン部品の組立や整備事業を担う瑞穂工場

 IHIは5年後に民間航空機用ジェットエンジンの整備能力を、現状比で最大約2倍の年間300台規模に引き上げる。エンジン監視システムの機能拡大で整備効率を向上するほか、整備拠点の新設で能力を高める。エンジン整備は1台当たりの受注額が1億―3億円で、補修部品販売を含め利益率が高い。同事業の伸長により航空機関連事業の収益性を底上げするとともに、多額の費用を要するエンジン開発原資を手厚くする。

 エンジン整備事業はエンジンメーカーの米ゼネラル・エレクトリック(GE)や同プラット・アンド・ホイットニー(P&W)のほか、川崎重工業も民間航空機エンジン向けへの参入を表明。競争が激化するなか、IHIは整備のリードタイム短縮などで差別化し受注拡大を狙う。

 IHIの遠隔監視システムは、自社開発したグループ共通のITプラットフォームで構築。飛行中のエンジン稼働データをリアルタイムで収集し、的確な整備プランを決定・遂行している。

 今後はエンジンの振動や排気温度を過去の稼働データなどから統計的に解析し、不具合の可能性を予測する作業を自動化する。GEもこのほど、振動変化を自動通知するサービス提供を始めた。

 エンジン整備は瑞穂工場(東京都瑞穂町)で担当するが、能力拡大に向けて拠点の新設を検討。埼玉県農業大学校跡地(埼玉県鶴ケ島市)のほか、米国など海外拠点の設置も視野に入れる。2018年度までに立地場所を選定する。

 IHIは現在、欧エアバスの小型機「A320」向けエンジン「V2500」を中心に整備事業を展開。同エンジンの累計出荷台数は7000台を超え、18年以降に整備のピークを迎える見通しだ。
日刊工業新聞2016年6月16日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
IoTの言葉はないが、ある意味IoTの王道事例。GE、ロールスロイスに負けじとIHIは「自社開発したグループ共通のITプラットフォーム」で遠隔監視を実現。GEは納品先まで複数産業拡張したプラットフォームを構築、ロールスロイスはMicrosoftと組んで構築。ここまでは差が生まれないかもしれないが、正念場はそれによってビジネスモデルを変えるところまで、純粋な製造業からドメインを広げられるか。それに興味ないと言えばコモディティの荒波にさらされ、積極的に取り組むならサービス維持と拡充のために継続的投資が必要となる。ヒントは自社のため構築したプラットフォームを他社にも使わせて利用料をもらうモデル。GEはやっているが日本企業にはノウハウある仕組みの外販を嫌がる技術陣も多い。所有ではなく利用する社会では"利用させてあげる"のもまたビジネスチャンスだと考え、柔軟かつしたたかな考え方をもってほしいものだ。

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