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なぜトヨタはPHVで攻めるのか。新型プリウスの日本仕様を初公開(動画付き)

米国、中国の環境規制でPHVが追い風に
 トヨタ自動車は15日に開幕した「スマートコミュニティJapan2016」で新型プラグインハイブリッド車(PHV)「プリウスPHV」(日本仕様)を初公開した。

 大容量リチウムイオン二次電池を搭載し、電力での航続距離を60キロメートル以上(従来車は26・4キロメートル)へ引き上げを目指す。ハイブリッド燃費目標値はガソリン1リットル当たり37キロメートル(JC08モード)。同車は世界で初めて、ルーフに搭載した太陽電池から走行系にも電力を供給。1日で最大5キロメートル、平均2・7キロメートルを太陽の力で走らせたいという。

 「プリウスPHV」の新モデルは9月後半に生産を始める。生産台数は年間5万―6万台規模に設定した。現行のPHVは2012年の発売以来、苦戦し、16年4月末までの世界累計販売台数は約7万5000台にとどまる。米国での環境規制強化やスマートコミュニティー(次世代社会インフラ)実現に向けてPHVの需要が膨らむとみて、強気の生産・販売計画を設定した。

 新型プリウスPHVは当初、月間4000―5000台程度の計画で生産する。多い月には同6000台を超える見通しだ。全量を堤工場(愛知県豊田市)で生産する。

 現行モデルは12年1月の発売当初、年間販売6万台の目標を掲げたが、実績は目標を大きく下回った。「こちらがベストだと思った新技術でも、使う立場で考えると簡単には選んでもらえなかった」(幹部)とPHVの特徴を消費者に伝え切れなかったのが原因だ。

 世界各地で環境規制が強化される中で、PHVや電気自動車(EV)の普及が加速しつつある。米カリフォルニア州では自動車メーカーに一定割合の電動車販売を求める「ZEV(ゼロ・エミッション・ビークル)規制」が強化され、18年からハイブリッド車(HV)がZEVの定義から外れる。中国政府による環境車支援策の対象もPHVとEVに限られる。


「スマートコミュニティJapan 2016」は17日まで開催中
日刊工業新聞2016年6月16日の記事に加筆
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
HVをエコカーの中核に据えてきたトヨタがPHVに注力するのは、世界1、2位の市場である中国、米国市場で「環境のトヨタ」の地位を死守するため。米中の当局では環境対応車でEVを優遇するようになってきた。米のカリフォルニア州ではHVが規制を満たすエコカーと見なされなくなり、トヨタは昨年は初めてクレジットの「買い手」になった。4年ぶりの新型PHVの世界初披露を3月のニューヨークモーターショーにしたのも、米国市場での危機感の表れだろう。 また中国では18年にPHVを投入、小型車「カローラ」「レビン」の2車種で現地生産する。日本メーカーで中国にPHVを投入するのは初。中国政府が普及を後押するエコカーはEVとPHVで、HVは購入補助金の対象外。地場のBYDが戦略的な価格でPHVで攻勢をかけており、ホンダも20年めどに発売を検討中。エコカーで「全方位戦略」のトヨタだが、地域によって緻密な戦略が必要。

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