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大衆薬の販売、コンビニまたも蚊帳の外?

販売者の受験資格変更で「規制強化」。ドラッグストアとの提携で急がば回れ
大衆薬の販売、コンビニまたも蚊帳の外?

ドラッグストアや調剤薬局との提携を増やさざるを得ないコンビニ

 コンビニエンスストアで一般用医薬品(大衆薬)の販売が広がるか―。
 大衆薬の第2類、第3類の販売ができる資格、「登録販売者」の受験制度が4月から改正された。受験の際に必要だった実務経験が2015年度の試験から撤廃されたのだ。これまで登録販売者の受験資格は、高校卒業以上の学歴に加え、医薬品の販売現場で月80時間以上、1年間の実務経験が必要だった。4月からは学歴と実務経験の両方が撤廃され、事実上、だれにでも門戸が開かれた。

 しかし新たに、資格取得後にクスリの販売現場で2年間の実務経験を積まないと店舗管理者、つまり〝正〟登録販売者になれない制度ができた。つまり資格を取得してもすぐに一人では大衆薬の販売することはできないのだ。コンビニにとっては大衆薬の販売は悲願。それだけに業界からは「今回は規制緩和ではなく、規制強化だ」(大手コンビニ)と指摘する声も聞こえてくる。

 コンビニでの大衆薬販売が進まない理由は販売制度に尽きる。厚生労働省も薬剤師による販売から登録販売者という制度を設け、さらに今回受験にあたって実務経験を撤廃するなど段階的に緩和している。しかし、コンビニ業界は、厚労省が進める受験資格の改正では資格を獲得しにくい業態だ。第一に大衆薬を販売している店舗が極めて限られているからだ。ドラッグストアやスーパーの店舗と違ってクスリ販売の実務経験を積む場が極めて少ないのだ。

 そのためコンビニ業界の登録販売者の実情はなんともお寒い限りである。大手コンビニでは登録販売者をドラッグストアと組んだり、独自に養成したりしている。しかし、そもそも自社に大衆薬の販売で実務経験を1年以上積める場が極めて少ないためローソンでは社員と加盟店の合わせても、現状の登録販売者の人数は350人程度(このうちローソン社員が130人)。

 登録販売者の資格がとりにくいのならば、ドラッグストアと提携して大衆薬の販売を増やした方が近道とばかりに、ドラッグストアとの提携を増やしているところもある。

 ファミリーマートは12年に第一弾としてヒグチ産業と組みコンビニドラッグの展開に乗り出したが、提携企業は16社と増えたものの展開店舗は昨年12月までで32店とそれほど増えていない。今期末までには40店体制になる見通しだが、いわば大衆薬販売に資格制度の壁は厚いと言わざるを得ない。

 ローソンではツルハと提携、ドラッグストアとコンビニの一体型店を3年で100店以上展開する計画を発表したし、さらにツルハ以外の提携先や独自にドラッグ型コンビニを500店にまで拡大する計画を持っている。

 しかし、例えば24時間大衆薬の販売をしょうとすれば1店あたり最低でも4、5人以上の登録販売者が必要になるとみられている。単純に5人としても2500人の登録販売者の資格を持ったパートやアルバイトの確保が必要になる計算だ。

 セブン―イレブン・ジャパンでも都内で大衆薬販売の実験を進めているが、拡大するというアナウンスはまだない。それも資格制度がネックになっている。

 今回の受験資格緩和でパートやアルバイトの店員が資格を取得しても、先輩の資格者がいない店舗で実務経験を積むのは至難の業だろう。つまり、今回の受験資格制度の見直しもコンビニはまたも蚊帳の外。緊急性の高い、大衆薬は身近で販売していた方が消費者にとってありがたい商品であるのは間違いないが、「コンビニでの大衆薬販売は依然スローペースで進む」という見方が大勢だ。

 今回の規制緩和をめぐっては大手スーパーやドラッグストアで、従来の実務経験1年以上という受験資格では実務経験実態を改ざんするなど不正受験が相次いだことが引き金。悪質なケースでは組織ぐるみで実務経験証明書を偽造していたケースもあった。

 もちろん、副作用など人命にかかわる商品だけに販売にあたっては慎重さが必要。しかし、もう少し制度設計自体を工夫できないものかという声はコンビニ業界には根強くあるのも確かだ。






ニュースイッチオリジナル
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
コンビニで大衆薬が売られていた方が便利。登録販売者制度を設けるのは仕方のないこととしても、コンビニの従業員が受験でき、資格取得後にもっと短期間で一人で大衆薬を売れるようにならんものか。

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