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三菱化学、“成長分野”と位置付けたイオン交換樹脂の生産再編へ

高機能品は黒崎、汎用は海外で。グローバル強化を実行
三菱化学、“成長分野”と位置付けたイオン交換樹脂の生産再編へ

昨年末に生産を始めた韓国の合弁工場。今年度内にはフル稼働する

 三菱ケミカルホールディングス傘下の三菱化学は2016年度内にも工業用水処理などに使うイオン交換樹脂の生産体制を再編する。主力の黒崎事業所(北九州市八幡西区)は付加価値のある高機能品に特化させ、汎用品は最新の韓国工場などに集約する。従来は米ダウ・ケミカルなど海外勢に規模で劣り、汎用品分野が比較的弱かった。生産増強によりアジア地域中心に規模拡大を目指す。

 現在は黒崎事業所で発電所や電子デバイス製造に利用する高機能なイオン交換樹脂と、自家発電向けなどの汎用品を両方生産している。15年末に商業生産を始めた韓国・群山自由貿易区の合弁工場が16年度内にフル稼働するのをきっかけに、国内外で生産品目を見直すことにした。

 汎用品はコスト競争力のある韓国と台湾工場で集中生産する体制に切り替える。これまで汎用品分野は同業の米ダウやドイツのランクセスが高いシェアを獲得していた。

 イオン交換樹脂は微細で均一な粒子で、溶液中の不純物を吸着・除去したり、有益な物質(イオン)を抽出したりできる。最近は半導体や液晶パネル製造向けの超純水などの引き合いが強い。さらに、三菱化学は中国や東南アジアで今後新設計画の相次ぐ発電所向けを狙う。

 各工場の年産能力は黒崎が1万3000立方メートル、韓国が2万立方メートルでその半分が三菱化学の引き取り分となる。台湾は4500立方メートル、イタリアが100立方メートルだ。

 イオン交換樹脂の世界市場は現状2000億円規模で、年率2%程度の成長が見込まれている。三菱化学は世界4位に位置している。

日刊工業新聞2016年6月14日
米山昌宏
米山昌宏 Yoneyama Masahiro
三菱化学は2020年までの中期計画で、「ポートフォリオ転換の加速」「成長戦略の実行」「グローバル化の推進」を施策として掲げている。ポートフォリオ戦略では、事業を「成長事業」「基盤事業」「再構築事業」「次世代事業」の4つに分類、イオン交換樹脂は「成長分野」と位置付け積極投資の対象。韓国の工場は、三養社(韓国)と50:50で2013年に設立した三養ファインテクノロジー社の工場で、2015年後半に稼働を開始した。イオン交換樹脂は、アクア・分離ソリューション事業に含まれ、事業の売上高目標は2015年の1,200億円から2020年には1,650億円とする。もうひとつの施策のグローバル化の推進では、海外売上高比率を2015年の43%から2020年に50%に拡大することが目標。今回のイオン交換樹脂の生産の再編は、中長期計画の目標達成に寄与し、計画が着実に行われていることを示している。

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