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ボッシュ日本法人、今年末から救援要請サービス開始

日本でも自動運転分野を軸に成長目指す。昨年から公道試験
ボッシュ日本法人、今年末から救援要請サービス開始

ボッシュが提唱するコネクテッド・カーのコックピット

 独ボッシュの日本法人、ボッシュ(東京都渋谷区、ウド・ヴォルツ社長)は8日、都内で事業戦略説明会を開いた。自動運転分野を軸にした成長戦略の進捗(しんちょく)のほか、16年末に事故に遭った車に対し救援要請するサービスを日本で始める計画を公表した。センサーやIoT(モノのインターネット)技術を活用し、自動車分野でさらに存在感を高める。日系自動車メーカー向けの売り上げを21年まで年率2ケタで成長させる方針だ。

21年までに高速道路での自動運転実現へ


 独ボッシュは21年までに高速道路や高速走行が可能な道路で自動運転を実現する計画を掲げる。昨年は日本でも自動運転の公道試験を始めた。

 事業説明会ではこうした自動運転分野の取り組みのほか、18年内に新たな自動駐車システムを実用化する計画や、触覚デバイスなどを活用したドライバーの運転を支援する新しいインターフェースを披露。自動運転分野の取り組みが順調に進んでいることをアピールした。

 またヴォルツ社長は「日本はドイツ、米国に続く自動運転開発の重要な拠点だ」と強調。日本では特に人材採用に投資を振り向ける考えを示した。自動運転の実現に欠かせない、ソフトウエアやシステム開発の人材を補強し、「(16年は)3ケタ規模で人材を獲得したい」(ヴォルツ社長)と述べた。

 こうした自動運転関連の取り組みに加えて、自動車分野でIoT技術を活用した新たなサービスを充実させていく方針。16年末には、日本で車向けの緊急通報サービスを始める。

 車が事故の衝撃を検知すると自動で情報を発信し、クラウドを介してボッシュのオペレーターが緊急通報を確認。最寄りの救急隊に出動要請する仕組みで、救急隊がより迅速に事故車両に駆けつけることが可能だ。サービス開始に合わせ、オペレーターが作業するコールセンターも新設する計画。自動運転に加え車のサービス分野も強化し、成長につなげていく。

(事業戦略を説明するヴォルツ社長)

今年の日本市場の売り上げは堅調


 自動運転分野を中心とした競争が激化するなか「車はもちろん、産業機器や家電と言った他事業で培った知見を持つのが強み」(同)とした上で、これらの知見や「世界シェアの高いセンサーやIoT技術を融合させることで優位性を発揮したい」(同)と強調した。

 16年の日本市場の見通しについては「車輪ロック防止装置(ABS)や横滑り防止装置、カーマルチメディア製品が堅調に推移する」(ヴォルツ社長)とし、日本のボッシュグループ全体の売上高は前年比3―5%増を計画する。15年は2700億円だった。

自動運転車、2035年に日本・韓国は120万台に


 米調査会社IHSオートモーティブは7日、2035年までに世界中で約2100万台の自動運転車が販売されるとの見通しを発表した。自動運転車の普及では米国がいち早く世界をリードし、日本は20年の東京五輪・パラリンピックに先立って関連の産業連携や技術投資が増え、普及が進むとみている。

 米国は自動運転車に関連する規制や信頼性、消費者の容認という課題を乗り越え、市場導入が一番早い見込み。米国での販売は20年に数千台にとどまるが、さまざまな活用事例やビジネスモデルがパーソナルモビリティーの新需要を開拓し、35年までに450万台まで急拡大する。

 日本と韓国は高齢化という人口動態変化や技術への親近感、革新的ソリューションの後押しで、35年までに合計120万台近くの自動運転車が販売される。日本の自動車産業は一致団結して欧米のライバルとの差を縮めようとするという。中国は普及が遅れるが、なんらかの自動運転機能付き車種が35年までに570万台販売され、世界最大の市場になる。欧州のうち西欧は高級車部門で引き続き業界をリード。35年までに300万台以上が、さらに東欧では120万台販売される。
 
 調査責任者のエギル・ジュリッセン博士は、「将来、自動運転車は自動車産業に新しいチャンスをもたらす。ハイテク産業などとの競争も激化するが、それが自律運転ソフトの信頼性やサイバーセキュリティー開発の加速につながる」とみる。

 一方で主席アナリストのジェレミー・カールソン氏は「変化に適応できない企業は取り残される」と厳しい見方も示している。


 
日刊工業新聞2016年6月9日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
ボッシュ日本法人の影響力はなかなか大きい。昔から日本の自動車メーカーとも協力関係を築き、日本で得たハイブリッド車などの技術や情報をドイツへフィードバックしている。ただ最近はIoTでドイツやボッシュが先行するケースが多く、日本の完成車メーカーがボッシュとどう付き合っていくか見物だ。

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