百貨店、“爆買い”急ブレーキ。買い物から観光にシフト
対応追いつかず。次は「今、ここでしか買えない」へ
百貨店で訪日外国人旅行者(インバウンド)による免税売上高が、急激に落ち込んでいる。日本百貨店協会がまとめた4月の免税売上高は前年同月比約1割減と、3年3カ月ぶりに前年を割った。5月は三越伊勢丹ホールディングス(HD)が同2割減、大丸松坂屋百貨店が同3割減となった。中国の関税引き上げや為替が円高に振れたほか、訪日客の消費傾向の変化が背景にあるが、対応が追いついているとはいえない。
訪日客の増加に伴い免税購入客数は増えており、4月は同7・8%増だった。一方で購入単価は同15・9%減となった。日本百貨店協会の近内哲也専務理事は「内容が(時計などの)一般物品から(化粧品などの)消費財に変わっている。土産などの“爆買い”は少なくなり、自分向けに買うようになっている」とし、免税売上高の減少傾向は続くと見る。
百貨店の市場規模はピークの1991年と比べると、約6割に縮小している。一方で免税売上高は14年が同1・9倍、15年が同2・6倍と急拡大した。追い風を生かそうと、百貨店各社は訪日客向けのサービスや売り場づくりを進めてきた。特に目に付くのが、消費税だけではなく、関税や酒税、たばこ税も免税となる空港型免税店の開設だ。
高島屋は1日、全日空商事(東京都港区)、ホテル新羅(ソウル市)と合弁会社を設立し、17年春に高島屋新宿店で1号店を開く。大阪での出店も見込んでいる。三越伊勢丹HDも銀座、福岡に続き、新宿に設ける予定だ。同社の大西洋社長は「17年3月期中に、高島屋さんよりも先に出したい」と対抗心を見せる。
空港型免税店は出国予定の日本人も利用可能とはいえ、主なターゲットはあくまで訪日客だ。政治や為替の動向に左右されやすい訪日客頼りの展開を進めることには、不安も残る。近内日本百貨店協会専務理事は「訪日客(の関心)が買い物よりも観光に移っている」と話す。
今後も訪日客の需要を取り込むには、“爆買い”を支えてきた富裕層だけではなく、「中間層」や訪日客のリピーター増加に応える戦略が欠かせない。ただ商品を売るだけではなく、イベントなどを組み合わせた魅力的な売り場づくりや、「『今』『ここで』しか買えない」商材の開発が必要だ。
(文=江上佑美子)
客数増えるが単価下がる
訪日客の増加に伴い免税購入客数は増えており、4月は同7・8%増だった。一方で購入単価は同15・9%減となった。日本百貨店協会の近内哲也専務理事は「内容が(時計などの)一般物品から(化粧品などの)消費財に変わっている。土産などの“爆買い”は少なくなり、自分向けに買うようになっている」とし、免税売上高の減少傾向は続くと見る。
百貨店の市場規模はピークの1991年と比べると、約6割に縮小している。一方で免税売上高は14年が同1・9倍、15年が同2・6倍と急拡大した。追い風を生かそうと、百貨店各社は訪日客向けのサービスや売り場づくりを進めてきた。特に目に付くのが、消費税だけではなく、関税や酒税、たばこ税も免税となる空港型免税店の開設だ。
高島屋は1日、全日空商事(東京都港区)、ホテル新羅(ソウル市)と合弁会社を設立し、17年春に高島屋新宿店で1号店を開く。大阪での出店も見込んでいる。三越伊勢丹HDも銀座、福岡に続き、新宿に設ける予定だ。同社の大西洋社長は「17年3月期中に、高島屋さんよりも先に出したい」と対抗心を見せる。
「中間層」やリピーターへの戦略不可欠
空港型免税店は出国予定の日本人も利用可能とはいえ、主なターゲットはあくまで訪日客だ。政治や為替の動向に左右されやすい訪日客頼りの展開を進めることには、不安も残る。近内日本百貨店協会専務理事は「訪日客(の関心)が買い物よりも観光に移っている」と話す。
今後も訪日客の需要を取り込むには、“爆買い”を支えてきた富裕層だけではなく、「中間層」や訪日客のリピーター増加に応える戦略が欠かせない。ただ商品を売るだけではなく、イベントなどを組み合わせた魅力的な売り場づくりや、「『今』『ここで』しか買えない」商材の開発が必要だ。
(文=江上佑美子)