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もはや迷宮―渋谷駅周辺の再開発を支える3Dモデリング技術

<追記あり>東急建設、建築と土木を融合
もはや迷宮―渋谷駅周辺の再開発を支える3Dモデリング技術

建築と土木の3Dモデリングを融合

 東急建設は東京・渋谷駅周辺の再開発事業で、独自の3次元(3D)モデリングを活用して工事を進めている。特徴は建築と土木を融合した3Dモデリングを導入していることだ。渋谷駅周辺は地上の建築物と地下の構造物が複雑に入り組み、建築と土木の両工事を進める必要がある。同3Dモデリングにより、地上と地下の建築・構造物を一体的に把握でき、施工の効率化に役立てている。

 渋谷駅周辺では現在、建築物の解体・新築工事や鉄道改良工事、都市基盤の整備工事など、さまざまな工事が同時に進行している。複数工事に携わる東急建設にとって強力な武器が、3Dモデリング「UiM(アーバン・インフォメーション・モデリング)」だ。

 建設業界は建築と土木で、工事の手法を分けている。3Dモデリングも建築工事用に「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」、土木工事用に「CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)」の二つがあり、使い分けている。ただ、街の開発はオフィスビルや商業施設などの建築と、地下通路や配管などの土木の両要素が含まれる。UiMはBIMとCIMを融合した「街づくり用」として利用できる。

 建築と土木の大きな違いは「座標の考え方が異なる」(小島文寛土木本部土木技術設計部技術企画グループCIMチームチームリーダー)という点だ。土木では国土地理院の測量などによる公共座標を活用して、道路やトンネルを設計・施工。建築では建物をつくる基準線となる「通り芯」を基に設計・施工するため、土木と建築では見方やとらえ方が違ってくる。

 UiMの作製にあたり、公共座標を取り入れて渋谷駅周辺の東西2キロメートル、南北1・7キロメートルをデータ化し、建築物の位置を把握した。公共座標の利用で、地上と地下で入り組んだ建物や構造物でも正確に位置を把握できる。

 このデータを基に、複雑な現場ではUiMで地上の建築物と地下の構造物を確認する。例えば、建築物の地階にある駐車場と、それにつながる地下道路では建築と土木の両工事が必要。UiMにより構造物の配置状況を把握でき、工事関係者の合意形成が容易になる。「形状の把握だけでも十分なメリット」(越前昌和建築本部建築部BIM推進グループグループリーダー)がある。

 東急建設は渋谷の再開発事業で、UiMをさまざまに活用している。今後他の街づくりでも、UiMを提案していく考えだ。
(文=編集委員・村山茂樹)
日刊工業新聞2016年6月7日 建設・エネルギー・生活1面
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
東急建設には、筆者のファンドが03年に会社分割スキームに基づき投資した経緯がある。それにより、重荷になっていた不動産在庫が切り離され、東急グループの一員として渋谷再開発計画にも積極的に参画。筆者も同社の取締役を務めていたが、土木は公共事業頼りで利幅も小さく普段は苦労するものの、こうした複合開発では生きる。渋谷は東急建設にとっては地の利があるビッグプロジェクトであり、新技術も取り入れて是非成功させて欲しい。

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