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東京・日本橋をライフサイエンスの拠点に!三井不が産学官の連携組織

7月から会員募集、運営諮問委員会には京大の山中教授ら
 東京・日本橋地区でライフサイエンス分野の産業集積が加速する。三井不動産は産学官連携を推進する組織を新設し、支援に乗り出した。組織には慶応義塾大学の岡野栄之医学部長や京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長ら著名な研究者も参加する。手厚い支援でベンチャーの集積や新産業創出を促すことで、ライフサイエンス分野を日本橋の新たな“顔”に位置づけ、街の価値向上に結びつける狙いだ。

 新設した組織は「ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK―J)」。ライフサイエンス関連の企業・団体が集中する「日本橋ライフサイエンスビル」に拠点を構えた。会員間の交流・連携のほか、起業家・ベンチャーが対象の支援プログラム提供、投資家とのマッチングの機会の提供などを進める。会員募集は7月に始める。

 このほか政府の日本医療研究開発機構の創薬支援戦略部の東日本統括部が入居する「日本橋ライフサイエンスハブ」、ライフサイエンス系のベンチャーが集まる「日本橋ライフサイエンスビル2」を推進事業拠点とする。

 三井不動産はLINK―Jとの協業を、これまで進めてきたベンチャーとの共創事業「31ベンチャーズ」や、千葉県柏市で進める「柏の葉スマートシティ」とともに、新産業創造の柱としている。「ライフサイエンスに関わる幅広い産業が生まれ育つことで、日本橋エリアのさらなる価値向上」(菰田正信社長)を期待している。

 日本橋は江戸時代から薬問屋が集まり、現在も日本を代表する医薬品企業の本社が多い。同エリアに集積するライフサイエンス関連の企業は400社とも言われる。LINK―Jの理事長に就任した慶大の岡野部長は「米国のシリコンバレーを都市型にしたような姿をつくりたい」と意気込む。

 日本橋ライフサイエンスビルには、ライフサイエンス分野での提携で合意した米カリフォルニア大学サンディエゴ校も拠点を置く予定。同じくサンディエゴに拠点を置く750社・団体が加盟するライフサイエンス産業の会員組織「バイオコム」とも提携を決めるなど、国境をまたぐ連携も進める。

 LINK―Jの運営諮問委員会には京大の山中所長のほか、理化学研究所の松本洋一郎理事らが名を連ねる。山中所長はLINK―Jについて、「ライフサイエンスのさまざまな分野において、これまでにない新たな産業を生み出すための触媒であり、研究成果の社会還元を加速する重要な役割を担う」とコメントしている。
日刊工業新聞2016年6月6日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自分が不動産業界を担当していた十数年前と三井不動産のイメージはかなり変わりましたね。当時は業界の盟主として鎮座し、何ごとにも保守的な会社だったが、今ではベンチャー連携と言えば、真っ先に名前が出てくる会社の一つ。もともと日本橋は「伝統」や「老舗」の街である一方で、三井不はそこに「革新」という新しい価値を持ち込みたいと考えている。東京の中でも街間競争も激しくなっている。さらに今後、既存のオフィスや商業など不動産事業だけでは成長性がないという強い危機感も社内の一部にはある。日刊工業新聞も日本橋に本社を構えていて、すでにイベントなどで連携も始まっている。

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