川重、3年後に鉄道車両事業でかつてない規模を狙う

アフターサービス伸長がカギ

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川重の米ヨンカース工場
 「2018年度は今までにない事業規模となる」―。川崎重工業で鉄道車両などを担当する車両カンパニーの小河原誠常務執行役員は、期待感をあらわにする。18年度は受注・売り上げとも、大台の2000億円に設定し、15年度に比べ売上高約4割増、受注高約5割を伸ばす方針。小河原常務は「現段階で売上高、受注高とも半分はすでに見えている」と強調する。横ばいだが一定の需要が見込める日本をベースに、成長市場の北米・アジアで積み上げを狙う。

 世界の鉄道市場の本丸は、約5割を占める欧州と言われる。ただここは、独シーメンス、仏アルストム、カナダ・ボンバルディアという“ビッグ3”の主戦場。日本勢では日立製作所が英国で攻勢をかけているが、小河原常務は「欧州はハードルが高い。あえて行かなくても、北米やアジアにまだ魚はいる」と、冷静に市場を見つめる。

 川重がボンバルディアに次いで、第2位のシェアを持つ米国市場。北東回廊(東海岸)に強く、4000両を超える納入実績を持つ。未行使オプションを含め約29億ドル(約3161億円)の豊富な受注残もあり、ヨンカース工場(ニューヨーク州)やリンカーン工場(ネブラスカ州)では高い稼働率を持続し、「25年まで安定した運営が可能」(小河原常務)としている。

 さらにアジア市場では、トップシェアを誇る台湾、シンガポールでの収益拡大とともに、インドやミャンマー、バングラデシュといった新興国市場の深耕を重点施策に位置づける。15年度の地域別売上高比率は、日本35%、北米30%弱、アジア30%強と、バランスが取れているのも特徴だ。

まず北米をターゲットにM&A戦略描く


 新中計では全社で掲げるROIC(投下資本利益率)経営への貢献に向け、メンテナンスや更新工事、保守部品などのアフターサービスに本格的に力を入れる。事業ノウハウの取り込みには、M&A(合併・買収)やアライアンスで臨む。小河原常務は「(アフターサービス向けの)M&Aはかなり意識している」と明かす。まずは北米をターゲットにM&A戦略を描く。

 鉄道サービスが後進の新興国では、車両を含む鉄道システムのパッケージ提案が強力な武器となる。鉄道システムは地域の有力企業と連携し、市場開拓を狙う。「持たざる者の強みをいかんなく発揮したい」(同)。

 川重の強みはなんと言っても、航空機なども手がける総合重工メーカーであること。各事業部門や研究開発部門との技術シナジーを加速させ、次世代高速車両の開発では主役の座を狙う。

川重の次期社長は海外経験20年、鉄道車両のエース


 川崎重工業は金花芳則副社長(62)が6月下旬に社長に就任する。金花氏は「創立120周年の節目にかじ取りを任され身の引き締まる思いだ。ROIC(投下資本利益率)経営を継承し、根幹である資本収益性を上げる。規模だけを追うM&A(合併・買収)はやらない」と話す。

<村山社長(左)と金花次期社長>

金花氏はこんな人


 入社以来、鉄道車両畑を歩み、英国に6年、米国に14年と合計20年の海外駐在経験を持つ国際派。かねて次期社長の本命候補と言われていた。1月末、村山滋社長から「決めたからやってほしい」と後任の打診を受けた。

 川重製の鉄道車両が約4割を占めるワシントン、ニューヨーク、ボストンを結ぶ「北東回廊」での拡販に貢献するなど、顧客と深い信頼関係を築き、事業が米国に根付くのを目の当たりにしてきた。

 エンジニア出身で新しい物好き。豊富な社内人脈を持ち、航空機で使われる炭素繊維強化プラスチックを採用した台車「efWING」の世界初の開発を指揮した。今後も「愚直に技術力を高める」と断言する。

 根に持たない性格。ただ、自身の功績を他人に「言いたがり」なので、老子の言葉「善く行く者は轍迹(てっせき)なし」を胸に「でしゃばらないようにする」と語る。趣味はゴルフ。週末のジム通いを復活させたいとか。
(文=鈴木真央)

日刊工業新聞2016年6月3日

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長塚崇寛
名古屋支社編集部
編集委員

高シェアを持つ北米では豊富な納入実績をテコに、車両のアフターサービス事業に本腰を入れていく。航空機エンジンや船舶同様、収益性の高いアフターサービスは将来の利益成長の柱となる。M&Aや現地企業とのアライアンスも模索しており、次の一手が注目される。

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