「パンの缶詰」でおなじみパン・アキモトがベトナムへ

「日本風」を現地の若者に伝授、“町のパン屋”フランチャイズ展開という夢

 パン・アキモト(栃木県那須塩原市、秋元義彦社長)がベトナムのダナン市に開いたベーカリー「ゴチパン」の滑り出しが好調だ。日本式の菓子パンを広めつつ、独立起業を目指す現地の若者にパンの製造技術や販売ノウハウを伝授する。今後、ベトナムを軸にアジアで“町のパン屋”のフランチャイズ展開の夢を持つ。

 「熟成されたおいしいパンと、おもてなしの心を持つ日本風のパン屋を現地に根付かせたい」―。秋元社長はそんな思いを胸に2015年1月、ダナン市にベトナム現地企業などと合弁会社を設立。同年8月に開店したゴチパンは、菓子パンや調理パンなどを1日当たり計1000個ほど販売する。店内で飲食もでき、連日にぎわっている。延べ床面積は約80平方メートルで、一連の設備には数百万円を投じた。

 ベトナムは親日的な国だが、フランス統治時代からフランスパンが普及しているため、日本式の菓子パンは珍しい。ダナンにはリゾート地と大規模産業団地がある。住民の所得向上や駐在外国人の増加などに伴い、ふっくらして甘みのあるパンの需要が見込めるため進出を決断した。

<ベトナム中部のダナンにオープンしたベーカリー「GOCHI PAN」>

採用条件は「独立開業の夢を持っていること」


 ゴチパンの年間売上高は約1200万円の見通しで、3年後には約3600万円を目指す。原材料は包装資材の一部を日本から送る以外、小麦粉などを含め、地元の問屋や市場などで調達している。パンの販売単価は、現地の従来店より高い。味や質、衛生面にこだわり、手間をかけているからだ。「評価は上々。ベトナム全土に広げられる可能性を感じている」(秋元社長)という。

 従業員はベトナム人6人と、1カ月交代でパン・アキモト本社工場から派遣される日本の職人。現地人の採用条件に「パン屋を独立開業する夢を持っていること」(同)を掲げる。秋元社長は食ビジネスに対するプライド、後に続く起業家の育成・支援への思いが強い。

 秋元社長の知人が現地の大学で教えており、日本語が堪能な学生の紹介を受けた。開店に当たってはその卒業生を採用した。リーダー候補には日本の本社で約3カ月間の研修を実施。一方、日本の外国人技能実習生制度を活用し、ベトナム人3人に今年初めから本社で3年間の実習を開始した。いずれも、日本独自のきめ細かな製造技術や接客手法を教え込む。

 秋元社長は今後、ベーカリーのフランチャイズ展開で、ゴチパンから独り立ちした若者らをネットワーク化したいとしている。ゴチパンを“ハブ”に、原材料の共同購入や設備面のノウハウ共有などの面で後押しする。一方、日本の従業員もベトナムで一定期間、技術指導することで、国際感覚を身につけられ、現地文化を理解できるメリットがある。

 パン・アキモトは、焼きたてパンを長期保存する「パンの缶詰」の製造・販売、それを下取りして被災者や飢餓状態の人々に配布する「救缶鳥プロジェクト」で知られる。ゴチパンは“町のパン屋”という原点に立ち返り、世界を見据えた新たな挑戦といえる。
(文=栃木支局長・山中久仁昭)

日刊工業新聞2016年6月1日 モノづくり面

昆 梓紗

昆 梓紗
06月05日
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日本のお菓子はベトナムでも人気があります。メロンパン、クリームパンなど日本ならではのパンも人気が出そうです。

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