「榊原経団連」2期目へ。改革へ問われる突破力
経団連の榊原定征会長が2期目(1期2年)に入った。政権と経済界は“車の両輪”として経済再生に尽力してきたものの、年明けから“車窓”の景色が変わった。原油安と新興国経済の停滞を“発火点”に世界経済は減速。つれて日本経済の先行きも視界不良だ。想定外である海外経済の下振れリスクは日本としていかんともしがたいが、景気の腰折れは何としても避けたい。車の両輪は景気浮揚への道筋を模索する正念場を迎えている。
くしくも、安倍晋三首相による消費増税の再延期表明の翌日となった2日の定時総会。榊原会長は総会あいさつで、「デフレ脱却と経済再生の確実な実現、名目国内総生産(GDP)600兆円経済実現への道筋」を最優先課題に掲げ、低迷する個人消費の喚起、需要創出へ向け政府に「財政出動を伴う大胆な経済政策の早期実行」を求めた。
さらに、これら施策の実現には「政治との連携強化が不可欠」との認識を示し、引き続き政権との連携重視で臨む姿勢を示した。
これに呼応するかのように、来賓としてあいさつした安倍首相は経済界が求めてきた消費税率引き上げを、世界経済の先行きリスクを理由に見送った自身の判断に、榊原会長が一定の理解を示したことに触れ、「日本経済を再びデフレに戻さないとの決意を示したことに理解を頂いたことは心強い」と述べた。
その上で「成長戦略第2ステージでは、成長の新たな萌芽(ほうが)を社会全体のうねりにつなげていく」との姿勢を示し、民間投資喚起に力を注ぐ方針を示した。
そのひとつが、2日に閣議決定された「日本再興戦略2016」―。日本の潜在成長率を高める方策が並ぶ。経済財政諮問会議(議長=安倍首相)の民間議員として策定に携わった榊原会長は、「経済界の提言が迅速に施策化した」と感慨深げだ。
20年までに30兆円の市場創出が見込まれる「第4次産業革命」をはじめ10項目を数える成長戦略の重点プロジェクトは「官民が力を注いでいくべきだ」と自らに言い聞かせる。
政権との協調を重視しつつも経済界が求める政策の実現を模索する榊原会長。その象徴が、大手企業では3年連続となるベア実施。それともうひとつ。政府・与党が当初予定を1年前倒す形で決断した法人実効税率の引き下げだ。
官邸主導に賛否がある昨今の経済財政運営。だが榊原会長には、企業に積極的な対応を促す安倍政権と経済界が“キャッチボール”を重ねることで「企業が活躍しやすい環境整備」(榊原会長)を進めてきたとの自負がのぞく。
「18年度にはリーマン・ショック前を上回る設備投資80兆円の実現が可能だ。ただし、政府がこれらの施策を講じれば」―。
15年秋の「未来投資に向けた官民対話」の席上、榊原会長はこう切り出した。「経団連として積極的な設備投資を会員企業に働きかける。そのかわり、政府には法人実効税率の引き下げや規制緩和、経済連携協定の早期妥結など9項目の実現をお願いしたい」旨の注文をつけることを忘れなかった。
それから2カ月余り。経済再生、デフレ脱却が道半ばの中、円安・株高の追い風を受けてきた収益環境の風向きが年初から一変。企業業績を直撃しつつあり、「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限にふかす」(安倍首相)ことを迫られる局面にある。構造改革はこれからがむしろ正念場だ。引き下げが実現したとはいえ29%台の法人実効税率は国際的には高水準。アジア近隣諸国並みの25%を求める経団連にとっては、16年度の引き下げは目標達成への一里塚に過ぎない。
日本経済が分岐点に立っている局面だからこそ、経団連に求められる役割は大きい。民主導の経済成長には、労働規制をはじめとする規制改革や、原子力発電所の再稼働によるエネルギーの安定供給など、企業活動を後押しする政策の実現が欠かせない。榊原経団連の“突破力”が期待される。
経済再生へ正念場、景気浮揚の道筋探る
くしくも、安倍晋三首相による消費増税の再延期表明の翌日となった2日の定時総会。榊原会長は総会あいさつで、「デフレ脱却と経済再生の確実な実現、名目国内総生産(GDP)600兆円経済実現への道筋」を最優先課題に掲げ、低迷する個人消費の喚起、需要創出へ向け政府に「財政出動を伴う大胆な経済政策の早期実行」を求めた。
さらに、これら施策の実現には「政治との連携強化が不可欠」との認識を示し、引き続き政権との連携重視で臨む姿勢を示した。
これに呼応するかのように、来賓としてあいさつした安倍首相は経済界が求めてきた消費税率引き上げを、世界経済の先行きリスクを理由に見送った自身の判断に、榊原会長が一定の理解を示したことに触れ、「日本経済を再びデフレに戻さないとの決意を示したことに理解を頂いたことは心強い」と述べた。
その上で「成長戦略第2ステージでは、成長の新たな萌芽(ほうが)を社会全体のうねりにつなげていく」との姿勢を示し、民間投資喚起に力を注ぐ方針を示した。
そのひとつが、2日に閣議決定された「日本再興戦略2016」―。日本の潜在成長率を高める方策が並ぶ。経済財政諮問会議(議長=安倍首相)の民間議員として策定に携わった榊原会長は、「経済界の提言が迅速に施策化した」と感慨深げだ。
20年までに30兆円の市場創出が見込まれる「第4次産業革命」をはじめ10項目を数える成長戦略の重点プロジェクトは「官民が力を注いでいくべきだ」と自らに言い聞かせる。
政権との協調を重視しつつも経済界が求める政策の実現を模索する榊原会長。その象徴が、大手企業では3年連続となるベア実施。それともうひとつ。政府・与党が当初予定を1年前倒す形で決断した法人実効税率の引き下げだ。
政権と連携重視も収益環境の風向き一変
官邸主導に賛否がある昨今の経済財政運営。だが榊原会長には、企業に積極的な対応を促す安倍政権と経済界が“キャッチボール”を重ねることで「企業が活躍しやすい環境整備」(榊原会長)を進めてきたとの自負がのぞく。
「18年度にはリーマン・ショック前を上回る設備投資80兆円の実現が可能だ。ただし、政府がこれらの施策を講じれば」―。
15年秋の「未来投資に向けた官民対話」の席上、榊原会長はこう切り出した。「経団連として積極的な設備投資を会員企業に働きかける。そのかわり、政府には法人実効税率の引き下げや規制緩和、経済連携協定の早期妥結など9項目の実現をお願いしたい」旨の注文をつけることを忘れなかった。
それから2カ月余り。経済再生、デフレ脱却が道半ばの中、円安・株高の追い風を受けてきた収益環境の風向きが年初から一変。企業業績を直撃しつつあり、「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限にふかす」(安倍首相)ことを迫られる局面にある。構造改革はこれからがむしろ正念場だ。引き下げが実現したとはいえ29%台の法人実効税率は国際的には高水準。アジア近隣諸国並みの25%を求める経団連にとっては、16年度の引き下げは目標達成への一里塚に過ぎない。
日本経済が分岐点に立っている局面だからこそ、経団連に求められる役割は大きい。民主導の経済成長には、労働規制をはじめとする規制改革や、原子力発電所の再稼働によるエネルギーの安定供給など、企業活動を後押しする政策の実現が欠かせない。榊原経団連の“突破力”が期待される。
日刊工業新聞2016年6月3日付記事を一部加筆