デジタルイノベーション人材発掘せよ!IPA、「スーパークリエータ」10人認定

電子楽器、インテリジェントカメラ…高度研究テーマで成果

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インテリジェントカメラを開発した土屋氏
 情報処理推進機構(IPA)は若手IT人材を発掘・育成する「未踏事業」の目玉として、卓越した能力を持つ10人を2015年度の「スーパークリエータ(スパクリ)」に認定した。未踏事業では00年度から現在まで、延べ1650人のクリエータを輩出。このうちスパクリの認定者は今回の10人を加えて282人となった。研究成果は2日、都内で開いたIPAの発表会で披露し、日本発のデジタルイノベーションとして気を吐いた。

8つのプロから選出


 未踏事業はかつて“天才プログラマー”の発掘を看板に掲げていたが、いまはイノベーションの担い手という意味を込めて全体を「未踏クリエータ」と銘打っている。研究案件が採択された後、それぞれが約1年にわたってテーマを深掘りして成果をまとめる。このうち卓越した研究成果を上げた人材はスパクリとして認定する。15年度は八つのプロジェクトから10人が選ばれた。


 15年度の特徴としては、これまでにない高度な研究テーマが注目された。プログラミング可能なLSI(FPGA)を用いた電子楽器「ジグブースト」や、複数のディープラーニング(深層学習)をFPGA上に実装したインテリジェントカメラ「ナノディープ」、体温計のように手軽に心の状態を可視化する「心温計」などだ。

 ジグブーストは演奏に合わせてタイムリーに音声合成や出力が可能で、音響効果や音楽の表現の可能性を広げるもの。技術的には世界初となる。

小型ユニット内で高速演算を実現


 ナノディープはFPGA上に制御ソフト、開発環境などを1ユニットに収めたもの。ドローンなどに搭載したカメラはデータをサーバーに送信して処理するため、ネットワークに膨大な負荷がかかる。ナノディープはこうした課題を克服し、高速演算を小型ユニット内で処理することを実現した。

 心温計はアップルウオッチやフェイスブックなど既存のサービスと連携し、それらから得られたデータをもとに1日の身体行動量や認知行動量、睡眠量などを算出して、機械学習で心の状態を定量化する。利用者は自分の心の状態を把握して、適度なタイミングで休息をとり、気持ちの落ち込みを防ぐことができる。

 未踏統括プロジェクトマネジャーを務める竹内郁雄東京大学名誉教授は「人材育成はどんなインフラ投資よりも効率がよい」とIT人材の発掘・育成の意義を強調。今回の認定者らには「日本の元気印の旗印となって活躍し、次代を担う子供たちに夢を与えてほしい」と激励した。
(文=編集委員・斉藤実)

日刊工業新聞2016年6月3日 電機・電子部品・情報・通信1面

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昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

スパクリ認定者が282人。プロジェクト終了後どのような事業に携わっているのかが気になります。

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