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ANA、ベトナム航空に出資。コードシェアやマイル提携も

日本企業、ベトナムに対する評価急上昇
ANA、ベトナム航空に出資。コードシェアやマイル提携も

787の模型を交換するANAHDの片野坂社長(右)とベトナム航空のミン社長

 全日本空輸(ANA)を傘下に持つANAホールディングスは5月28日、ベトナム航空と資本・業務提携の契約を締結した。ベトナム航空株の約8.8%を2兆4310億ドン(約117億円)で、7月を目途に取得する。

 今年1月の基本合意に基づくもので、ANAホールディングスは出資のほかコードシェア(共同運航)やマイル提携、空港業務委託、技術支援など、包括的な提携を進めていく。

マイルも提携


 出資のほか、10月30日に始まる冬ダイヤからは、ANAとベトナム航空がコードシェア(共同運航)を開始。日本とベトナム双方の主要国内線30路線と、国際線10路線で実施する。

 マイルも提携する。冬ダイヤから「ANAマイレージクラブ(AMC)」会員は、ベトナム航空とのコードシェア路線でもマイルを貯められるようになる。また、マイルの特典航空券がベトナム航空の全便で利用できるようになる。

 空港業務についても提携。日本とベトナムの就航地で旅客のチェックインや貨物の搭降載、地上支援、機内食のケータリング、航空機の整備など各分野で、8月から相互受委託の開始を計画している。

 ANAホールディングスからは、取締役1人と実務担当者を数人派遣する。28日に都内で開かれた契約書の調印式には、ANAホールディングスの片野坂真哉社長とベトナム航空のファン・ノック・ミン社長が出席した。

 調印後、片野坂社長からミン社長には、ANAのコーポレートカラーである青色の有田焼の皿が、ミン社長からはベトナム航空のシンボルであるハスが描かれた陶器が手渡され、双方が運航するボーイング787型機の模型を交換した。

新就航地の可能性探る


 ベトナム航空は現在、日本路線を10路線を週60往復運航。ハノイから羽田(週7往復)と成田(週7往復)、関西(週7往復)、中部(週7往復)、福岡(週2往復)の5空港へ、ホーチミンから成田(週12往復)と関西(週7往復)、中部(週4往復)、福岡(週2往復)の4空港へ、ダナンから成田(週5往復)へ乗り入れている。

 ANAは成田-ホーチミン線(01年3月就航)と羽田-ハノイ線(14年3月就航)を、各週7往復運航。機材は成田-ホーチミン線がボーイング767-300ER型機(214席:ビジネス35席、エコノミー179席)、羽田-ハノイ線が787-8(240席:ビジネス42席、エコノミー198席)を使用している。

 ANAホールディングスの片野坂社長は、「今後767の退役により、ホーチミン線は787に大型化するだろう。提携を機に、フエやダナン、リゾート地のニャチャンなど、新しい就航地の可能性を研究していきたい」と語った。

 ベトナムはカンボジアやラオス、ミャンマーの「CLMV」地域の中心に位置し、アジアの中で今後の成長が期待される。日本政府観光局(JNTO)によると、ベトナムからの訪日客は、2014年は前年比47%増の12万4266人で、日本からベトナムへの渡航者数は、2014年は前年比7.3%増の64万7956人だった。

 ANAは9月1日に成田-プノンペン線を開設することから、ベトナム航空への出資を通じて、東南アジア市場の取り込みを進めていく。羽田と成田については、他のアジアと同様に成田路線でアジアと北米への接続需要の取り込みを図る。

JALとのコードシェア解消


 ベトナム航空は航空連合(アライアンス)のスカイチームに加盟しているが、ANAはスターアライアンスに属するため、航空連合をまたいだ提携となる。また、日本路線ではベトナム航空はコードシェアなどの提携を、日本航空(JAL/JL、9201)と結んでいる。

 来日したベトナム航空のミン社長は、「ANAホールディングスとの契約は包括的なものなので、10月からJALとの提携は解消する」と語り、JALとのコードシェアは10月29日までの夏ダイヤ限りで解消する。

 一方、今後の加盟アライアンスについては、「6月始めにスカイチームに対し、ANAとの提携を説明する」(ミン社長)と述べるに留めた。ANAは、スカイチームに加盟するガルーダ・インドネシア航空(GIA/GA)とも、航空連合が異なる航空会社間の提携を結んでいる。

 ANAホールディングスが出資する海外の航空会社は、出資比率0.63%のアシアナ航空に続いて2社目。航空連合をまたぐ提携は初めてとなった。日本国内では、スカイマーク(SKY/BC)とスターフライヤー、エア・ドゥ、ソラシドエア(旧スカイネットアジア航空)に出資している。

TPP追い風、ASEANの中でも優先順位高く


日刊工業新聞2016年5月12日



 日本企業がベトナムへの関心を高めている。みずほ総合研究所が資本金1000万円以上の製造業を対象に実施したアジアビジネス調査(有効回答約1100社)によると、今後2-3年に市場開拓を強化する国の中で、東南アジア諸国連合(ASEAN)ではベトナムの割合が2015年度は30%と、14年度に比べて5ポイント上昇。対照的に、インドネシアは32・1%と14年度より9・7ポイント低下した。

 ベトナムは環太平洋連携協定(TPP)加盟国である点が評価された。一方、インドネシアは資源安や中国経済減速のあおりを受けた点などが嫌気された格好だ。

 TPP参加12カ国に絞り投資を拡大する国を尋ねた質問でも、ベトナムを挙げる企業の割合が12・8%と最も高い。2位の日本(10・7%)や3位の米国(4・9%)も上回っている。

 また、TPP加盟国の中で輸入を拡大する国でもベトナムが1位(12・8%)で米国が2位(4%)。輸出拡大先では米国1位(19・3%)でベトナム2位(18・5%)とそれぞれベトナムが上位に入った。

 みずほ総研アジア調査部の酒向浩二上席主任研究員は「TPP参加12カ国の中で、域内輸出拠点、市場開放の両面でベトナムへの企業の期待は突出している」と指摘する。この調査は2月の1カ月間、みずほ総研会員企業を対象に実施された。
吉川忠行
吉川忠行 Yoshikawa Tadayuki Aviation Wire 編集長
JALとのコードシェアを夏ダイヤ限りで解消へ。ANAと業務資本提携したことで、冬ダイヤからはANAとコードシェアします。

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