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2年後、人工流れ星が空を駆ける―理系女性の挑戦

ALE代表取締役の岡島礼奈さん
2年後、人工流れ星が空を駆ける―理系女性の挑戦

岡島礼奈さん

 流れ星の正体をご存じだろうか。自然界の流れ星はとても小さな宇宙に漂うチリが大気圏に突入してできる。これを人工的に再現しようというのが、私たちのプロジェクトである。人工衛星に流れ星となる“素(もと)”をたくさん詰め込み、宇宙空間に打ち上げる。地球を周回する人工衛星から放たれた“素”が地球を3分の1周して大気圏に突入することで、地上から見ると流れ星に見えるという仕組みだ。

<流れ星を生み出す人工衛星>

 2009年から検討をはじめ、大学の先生方と共同研究を行い、事業化の可能性を探ってきた。11年に株式会社化したのが第一の創業だ。14年の地上実験で、流れ星の明るさが都会で見えるという結果を得て本格的に事業化をすすめ、15年に事業化メンバーが増え、第二の創業と言うべき節目を迎えた。その後プロジェクトは加速を続け、実現まであと少しのところまで来ている。私たちの流れ星を流せるようになるのは18年の予定だ。

 オリンピックの開会式や、野外ライブイベント、シティープロモーションなど、楽しみ方がいろいろ考えられる。まさに宇宙エンターテインメントだ。

 それだけではない。素材、速度、大気に突入する角度等わかっている人工流れ星を物差しとして使うことで、自然界の流れ星のメカニズム解明の手掛かりとなる。これは太陽系の成り立ちの理解にも役に立つ。謎が多い高層大気の物理学の解明にも応用できる。エンターテインメントとして収益を得ながら、基礎科学の進展にも貢献できる、とても魅力的なプロジェクトだと考えている。

 当初から、大学の先生、学生の方々はもちろんのこと、さまざまな人の力をお借りしてきた。メンバーが多様であればあるほど色々なアイデアが生まれ、プロジェクトの魅力が増していく。プライベートにおいては家族も増えた。今年初頭に第二子が生まれた。メンバーの理解のおかげで、時には子連れで出社することもある。

 私が宇宙工学用語の中で最も好きなものに、スイングバイという言葉がある。天体の万有引力を利用して人工衛星の方向を変えたり、加速させたりする技術だ。天体の力を借りることで、自分の力以上を発揮し目的地へ進む。まさに弊社はいろいろな方々の力を借り、スイングバイをして大きくなり、加速しつつある。これからさらにスイングバイは続く。

 企画協力・日本女性技術者フォーラム(JWEF)

◇ALE代表取締役、岡島礼奈
【プロフィル】東大院理学系研究科天文学専攻博士課程修了後、ゴールドマン・サックス証券、新興国ビジネスコンサルティング会社設立を経て現職。理学博士。
日刊工業新聞2016年5月31日 総合4/国際面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
人工流れ星を科学実験というだけでなく、エンターテイメントの一環としても考えている岡島さん。民間企業での経験や多彩な方との交流、プライベートで感じられたことなどをプロジェクトに大いに活かしている様子が伝わってきます。

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