ロボットが変えるiPS細胞の研究の現場

文=NTTデータ経営研究所

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一般的な研究室では、培養技術者が手作業で工程をつなぐ
 ロボット技術はその応用が、医薬、創薬等のヘルスケア業界にも注目されている。山中伸弥京都大学教授のiPS細胞(人工多能性幹細胞)の発見は、創薬研究、再生医療研究に大きなインパクトをもたらした。日本でもiPS細胞の利活用を含めた研究が加速しており、13年からの10年間で1100億円規模の予算が投入される予定だ。

 治療としての出口となる再生医療については14年11月に法改正と新法の施行により、日本は他国よりも市場投入が行いやすい環境が整った。私たちが訪問したことのあるiPS細胞を使っている研究室では、かなりの数の細胞を扱っており、培養技術者による手作業でおこなわれていた。

培養技術者の熟練度、結果に大きく影響


 研究者の悩みは、「iPS細胞はいまだ培養が難しく、培養技術者の熟練度が結果に大きく影響する」ということであった。研究者が専用の装置をいくつか試してみたところ、「金額が高いことにより導入できる台数に限りがある」「日々進歩する作製方法の革新に対してフレキシビリティーがない」という評価であった。このような理由により、培養技術者の教育訓練に力を入れて取り組んでいた。

 他国の状況を見てみると、ニューヨークステムセルファウンデーションという、幹細胞研究における世界有数の資金調達機関がある。自らも研究所を持ち、基礎研究や橋渡し研究に取り組んでいる。

マンハッタンにロボットアームが


 最近ではiPS細胞に関する研究が盛んである。ニューヨーク州マンハッタン島北部、比較的閑静な街中にあるビルの1フロアに研究所があるが、外見は普通のオフィスビルで、この中で最先端の研究を行っているとは想像しがたい。

 中に案内されると、作業台、培養装置、保冷庫、検出装置などが、体が通る隙間もないほどにひしめき合っている。その間を細胞が入ったプレートが縦横無尽に飛び交っていた。

 ここで作業をおこなっているのは人ではなく、ロボットアームとベルトコンベヤーであった。いずれも専用の装置ではなく、汎用的な装置をつなぎ目的を達成するよう組まれていた。

 活躍していたのは研究所内部で雇用しているロボット工学・情報技術工学分野のバックグラウンドを持つ人材だった。世界金融の中心地は研究資金も集まるスピードが速い。現在、新規の研究所への移転と、次世代システムの導入を計画している。次に狙うのはGMP対応、すなわちヒトにも投与可能な細胞の製造だ。

 技術の摺合せは、日本のお家芸といえる。しかし、個々の研究レベルでとどまっていては宝の持ち腐れだ。目的を見据え、多様な技術を持ち寄り、高めあうことが必要だ。
文=NTTデータ経営研究所
事業戦略コンサルティングユニット産業戦略グループ長 シニアマネージャー 三治 信一朗
事業戦略コンサルティングユニット産業戦略グループ シニアコンサルタント 野田 恵一郎

(2016年5月27日 ロボット)

COMMENT

村上毅
編集局ニュースセンター
デスク

iPSもロボットも日本が強い産業分野。iPS×ロボットが新しい扉を開く。

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