気球で電波お届け―ソフトバンク、気球基地局が災害時に活躍

  • 0
  • 0
北海道大樹町で行った実証実験(ソフトバンク提供)
 ソフトバンクは4月に発生した熊本地震で、携帯端末用の電波を臨時で中継する気球基地局を初投入した。福岡県八女市の上空で係留させ、熊本県阿蘇地方に救援に向かう支援者などの通信環境を強化した。気球基地局は、大規模な通信障害が発生し復旧に時間を要した東日本大震災を受けて開発した。全国主要拠点に配備した2013年以降も実証実験を重ねてシステムを改善するなど、災害対策の基盤の一つとして検証を続けている。

 ソフトバンクは5月上旬、北海道大樹町の上空100メートルで直径5・3メートルの気球基地局を稼働させた。通信容量が従前の2倍になるアンテナを新たに搭載し、その性能などを検証した。同社研究開発本部の藤井輝也フェローは、「期待通りの成果が得られた」と説明。今後、全国の気球基地局に新規アンテナの搭載などを進めていく。

半径10kmカバー


 気球基地局は災害対策の一つ。同社は「東日本大震災後、創業以来の圧倒的な規模で災害対策に投資を行った」(ソフトバンクグループの孫正義社長)。大震災では、約4000件の基地局が地震や津波の影響を受けた。通信障害が大規模に発生して、「責任を痛感した」(同)ことが開発のきっかけになった。

 災害対策として気球を活用した理由は、アンテナを高く設置することで電波が届く範囲を広げるためだ。臨時の中継装置を搭載した車(移動中継車)はカバー範囲が半径1キロメートル程度にとどまる。これに対して気球は半径最大10キロメートルの範囲をカバーできるという。設置場所に到着後、2―4時間と短時間で稼働できる利点もある。
気球基地局の運用に当たっては制度改善も進んだ。従前は法的な位置付けがなく、大規模災害時に超法規的措置として利用される見込みだった。

小型化など模索


 しかし、総務省は3月に関係規則を改正。台風などの局地的災害を含めた自然災害時の運用を可能にした。「事業者による実証実験で安全が確認されたため、運用を認めた」(総務省電波部移動通信課)という。熊本地震での活用は、この制度に基づく初の事例となった。

 藤井フェローは「気球基地局は災害対策であり、使われないことが一番良い。ただ、しっかりとした『備え』は必要だ。東日本大震災で我々はそれを認識させられた」と力を込める。現在は設置場所までの輸送の迅速化を課題と捉え、気球の小型化などを模索している。
(文=葭本隆太)

日刊工業新聞2016年5月26日 電機・電子部品・情報・通信2面

COMMENT

昆梓紗
デジタルメディア局
記者・編集者

災害時、いち早く連絡が取れることや情報を得られることが生死を分けることもあります。ぜひ運用を進めてほしいものです。

関連する記事はこちら

特集