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ソニー、今期業績のリスクと回復力

 ソニーは24日、2017年3月期の連結業績予想で営業利益が前期比2%増の3000億円となる見通しを発表した。家庭用ゲーム機「プレイステーション4(PS4)」の販売増によるゲーム事業の大幅増益と、スマートフォン事業の黒字転換が主な増益要因。デジタルカメラ事業は熊本地震でデジカメなど向け画像センサーの生産拠点が被災した影響で大幅減益の見通し。デバイス事業も減益を予想する。

 デバイス事業は400億円の営業赤字(前期は292億円の赤字)の見込み。そのうち外販向け高機能カメラモジュールの開発・製造を中止した影響で、約300億円の営業赤字を計上する。会見した吉田憲一郎副社長兼最高財務責任者(CFO)は「イメージセンサーの増産投資は、トップの判断でブレーキを踏んでいる」と説明。月8万7000枚を目指すとしていた生産能力は、現状の月7万枚を維持する方針だ。

 熊本地震で被災したソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの熊本テクノロジーセンター(熊本県菊陽町)は、8月にはウエハー投入ベースでフル生産を目指す。出荷ベースで震災前の水準に戻るのは、10月以降になる見通しだ。同センターは21日からウエハー工程の稼働を順次再開。後工程の一部も5月中旬から段階的に稼働している。

日刊工業新聞2016年5月25日
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
デジカメ事業の17年3月期売上高は前期比22.5%減の5300億円、営業利益は同77%減の160億円の見通し。デジカメに加え放送用機器や監視カメラなどの大幅減収が要因だ。高付加価値路線で収益を高めていた矢先に水を差された格好だが、吉田CFOは「事業構造転換をしており、地震の影響は大きいものの影響は限定的」と自信を見せる。事実、地震被害がなければ全社の営業利益は4000億円規模になることから、18年3月期に営業利益5000億円以上とする目標は変えない方針だ。 これまで拡大してきたデバイス事業を成長分野とする事業戦略を見直す契機にもなり得るが、市場環境の変化への対応は以前よりもスピーディーになってきた印象。吉田CFOは基本戦略は変えないとしており、スマホの鈍化を車載など他の分野で補えるかが焦点になりそうだ。6月29日は経営戦略説明会がある。そこでの平井一夫社長の発言に注目だ。

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