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老舗和食器「たち吉」、再生ファンド傘下で1年目の通信簿

社内改革進み、半年で黒字化。本格的な成長戦略はこれから
老舗和食器「たち吉」、再生ファンド傘下で1年目の通信簿

3月、直営1号店が日比谷シャンテ(東京・千代田区)にオープン

 1752年創業の老舗、和食器小売りのたち吉(京都市下京区、渡邊信夫社長、075・211・3141)が、かつての勢いを取り戻し始めた。債務超過で経営に行き詰まった同社を、2015年4月に再生ファンドのニューホライズン キャピタル(東京都港区)が支援を引き受け改革に乗り出すと、同年4−9月期のわずか半年で黒字化を達成した。渡邊社長は改革のキーワードを「品があって、気が利く」ことだと話す。

 たち吉の16年3月期売上高は、前期比7%増の43億円超になったもよう。営業損益は前期の赤字から約3300万円程度の黒字に転換した。17年3月期は売上高が44億円程度、営業利益は4500万円程度を見込む。

 高級和食器を国内外の百貨店やアウトレット155店舗に展開するたち吉だが、V字回復したとはいえ、売上高はまだピーク時の約6分の1。本格的な成長路線への転換とブランドの再構築はこれからが正念場となる。

たち吉・渡邊信夫社長インタビュー「『他責文化』を排除し全員で問題意識を共有」



 苦しい経営から復調への陣頭指揮を執った渡邊信夫社長に、これまでの改革の中身と、今後の戦略などを聞いた。

 ―旧体制の課題は。
 「縦割り組織で(他者や他部門に責任を転嫁する)『他責文化』が非常に目立つ会社だった。部門ごとの最適化を常に求めるため、全体で共通の問題意識が醸成されない。そこで月に1回テーマを決め、部長職以上が全員参加で審議を行うルールを作って情報の共有を進めた」

 「次に在庫の改善にも取り組んだ。物流センターで滞留していた在庫を引き取りアウトレットへ配置して、百貨店の商品鮮度を徹底した」

 ―“ブランド委員会”を立ち上げました。
 「売上高の減少は、ブランド価値低下が要因のひとつ。かつては単価は高いが季節感や色が斬新(ざんしん)といった、消費者に役立つ食器を並べていた。ところが少子高齢化や安価な輸入食器が増加し、市場が縮小し始めた」

 ―対抗するため低単価へ方向転換したのも原因ですね。
 「ブランド回復のために突き詰めた、たち吉のアイデンティティーは『品があって、気が利く』。再び消費者に認めてもらう上での改革のキーワードだ」

 ―具体的には。
 「消費者と最前線で接客する販売員をパートから社員に引き上げ、商品知識の研修を始めた。女性の営業職も登用し人員強化を進めている」

 「百貨店は重点店舗を再編し不採算店舗を閉鎖した。3月に開店した直営店第1号や、訪日外国人観光客の取り込みが貢献したアウトレットでは、高価格帯でも支持が得られて売り上げ拡大へと転換した」

 ―海外展開をどう進めますか。
 「和食器への評価が高い台湾をはじめアジア圏を中心に強化する。20年の海外売上高は、現在の約3%から10%に引き上げる」

 ―健全経営までの道のりは。
 「現在は収益構造が高いとはいえず、軌道に乗るまで最低3年を見ている。20年中期目標の売上高は52億円から53億円、営業利益は5億円を目指す」
(文=山下絵梨)
日刊工業新聞2016年5月25日
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
昨年3月、ニューホライズンキャピタルが支援する直前のたち吉は、20億円近い実態債務超過で、商品の仕入れもままならず、給料も遅配する有様だった。それが、今は自己資本比率40%を越す堅固な財務体質になり、ブランドの再構築を行ない、その新商品が春から店頭に並んでいる。ウェブサイトを一新し、海外出店も進み、国内には直営店まで出した。先期は実質10年振りの黒字化を達成したが、施策の効果が出るのはこれからで、目線はもっと高いところにある。

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