<三菱自不正>顧客への補償を最優先、サプライヤーとの交渉はその後

部品メーカー、最悪の事態は免れるも不安解消されず

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三菱自水島製作所(岡山県倉敷市)の門に展示された生産停止の軽車種「eKスペース」
 三菱自動車の燃費不正表示問題発覚から1カ月。水島製作所(岡山県倉敷市)における軽自動車の生産停止、国内販売の失速…。三菱自を主要取引先とするサプライヤー、ディーラーの経営環境は厳しさを増し、従業員の自宅待機が続く企業もある。だが、下を向いていても状況は変わらない。サプライヤーからは「従業員のために、今すぐにできる仕事を探す」「協力会が解散した数年前から販路開拓を続けてきた。今回の事件を機に一段と力を入れる」など新たな動きが出始めた。

 関西圏のサプライヤー首脳は「大きな変化は他の自動車メーカーからいろいろと話が来るようになったこと。プラス思考でやっていきたい」と明かす。

 行政も後押しする。経済産業省・中小企業庁は20日、三菱自との取引が売上高の20%以上を占め、軽自動車生産停止の影響で、1カ月間に前年同月比10%以上の減少が見込まれる中堅、中小のサプライヤーやディーラーを対象に、融資を受ける際の公的な信用保証枠を通常の2倍に拡大する「セーフティネット保証2号」を発動。

 各都道府県の信用保証協会による保証限度額は通常2億8000万円だが、同額の別枠を設定。日本政策金融公庫や商工中金などに資金繰りに関する特別相談窓口を設ける。実は三菱自に関連した同制度の発動は2回目。04年にリコール隠し問題に端を発した生産縮小で発動し、合計250件、融資規模は68億円に達したという。

 経産省によると水島製作所に部品を納める1次サプライヤーは大小含めて411社。岡山県内企業は「会社をつぶすわけにはいかない。制度を利用する」と、経産省の迅速な対応を歓迎する。最短2週間程度で融資は実行される見込みだ。

「日産はサプライヤーとの取引に関してドライ」


 現時点で「連鎖倒産などの情報は入っていない」(中小企業庁)というが、資金繰り支援はあくまで”つなぎ“の延命措置。2次、3次サプライヤーの懐事情が苦しいことは確実だ。軽自動車の生産再開は、国土交通省による燃費性能の再審査、型式指定の取り直しなどを経る必要があるとみられ、見通しは立っていない。

 サプライヤー関係者によると「三菱自から具体的な通達は来ておらず、購買担当部長名で謝罪の電子メールを受け取った」という。別の関係者は「三菱自はエンドユーザーへの補償を最優先で行い、サプライヤーとの交渉はそれが決まってからになるようだ」と、正確な情報がないことに、不安を隠さない。

 三菱自が日産自動車と資本・業務提携したことで「最悪の事態は免れたが、日産はサプライヤーとの取引に関してドライなところがあると聞く。(新車モデルチェンジを機に)仕事を打ち切られるかもしれない」(サプライヤー幹部)。先の見えぬトンネルの中、中堅、中小企業経営者の胸の内は、さまざまな思いが錯綜(さくそう)している。

日刊工業新聞2016年5月23

COMMENT

安東泰志
ニューホライズンキャピタル
会長

下請け各社にとっては、日産が今後とも軽自動車生産に水島工場を使うと見込まれることは不幸中の幸いだ。日産は確かに購買に厳しいだろうが、これまで三菱傘下では、突然の設計変更など下請けとのコミュニケーションがうまくいっていなかったので、寧ろ改善されるところもあると思う。

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